Unsolicited
2021/09/21
要求されていない、 求められていない、 お呼びでない
< 注意書き > や < 免責文言 >で、
よく見かける 形容詞。
ぴたりと対応する日本語がないから困る。
–
◇ イメージすべきは 「 持ち込み原稿 」
【 定訳 】 unsolicited manuscripts
依頼や応募ではなく、 本人が 一方的に 持ち込んだ原稿。
※ 例文参照
【語源】
- 接頭辞 ” un “( ~ がない )
- 形容詞 ” solicited “( 意見を求められる )
の合成語
形容詞 ” solicited ” は、動詞 ” solicit ” より派生した。
すなわち、動詞 ” solicit ” の過去分詞形 ” solicited ” が
形容詞化したもの。
【発音】 səlísət
【音節】 so-lic-it (3音節)
動詞 ” solicit ” の初出は、15世紀。
ラテン語「 動揺した 」( sollicitus )が由来。
「 動揺して、不安になり、懇願する 」という流れ。
– 他動詞 「 懇願する 」「 せがむ 」「 誘う 」
– 自動詞 「 懇願する 」「 せがむ 」「 誘う 」
自他動詞の意味は、こうして重なる。
この意味合いは、名詞 ” soliciting ” 及び ” solicitation ” も引き継ぐ。
【発音】 sʌˈlɪsʌtɪŋ
【音節】 so-lic-it-ing (4音節)
– 名詞 「 勧誘 」「 売り込み 」「 客引き 」
訪問販売 お断り
【発音】 əlìsitéiʃən
【音節】 so-lic-i-ta-tion (5音節)
– 名詞 「 勧誘 」「 懇請 」「 教唆 」「 客引き 」–
ご紹介した以下すべて、売春などの性的な「 勧誘 」も含む。
- 動詞 solicit /səlísət/ 3音節
- 名詞 soliciting /sʌˈlɪsʌtɪŋ/ 4音節
- 名詞 solicitation /əlìsitéiʃən/ 5音節
◆ ” unsolicited ” は、否定の接頭辞 ” un ” を添えてある。
よって、これまで述べた内容と概ね逆となる。
” unsolicited ”
not asked for and often not wanted.
(ロングマン、LDOCE6)
【発音】 ʌ̀nsəlísitəd
【音節】 un-so-lic-it-ed (5音節)
英英辞典の語釈はシンプル。
日本語にぴたりと該当する語彙は見当たらない。
すんなり理解しにくく、難しいと感じてしまう。
–
この点、形容詞 ” vulnerable “、名詞 ” threshold ” に
共通する思い違い。
【 参照 】
発音にも癖があり、日本人にはなかなか難しい。
「L」にアクセントを置く。
【発音】 ʌ̀nsəlísitəd
【音節】 un-so-lic-it-ed (5音節)
5音節 なのもきつい。
「音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。
日本語の場合、原則として「仮名一字が1音節」。
そのため、音節を意識する機会は乏しい。
→ 音節の差異が顕著な日英比較は、” integrity ” 参照
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◆ “ unsolicited ” の意味することは、こんな具合。
当方が要求したものではない。
あなたが 勝手に送り付けた のだから、
我々に責任は一切ない。
一方的に提出してきた ものを、こちらが
どうしようと文句は言わせないよ。
事前にそれを理解しておいてね。
上記ハイライト3つが、本来の “unsolicited” を表す。
実務では、たった1語で、赤枠全体のニュアンス
を盛り込む場合が多い。
だから、”unsolicited” は重宝される。
◇ 日常使用での趣旨は、歯止め と 牽制
< 注意書き > や < 免責文言 > に明記すれば、
トラブル防止に役立つ。
「 勝手に提出された( unsolicited )ものを、
当方がどう扱おうとも、クレームの対象外 」
–
冒頭にて和訳に困ると記したのは、
” unsolicited ” が、上掲の太字部分すべてを併せ持つからである。
- 要求されていない
- 求められていない
が定訳に近い。
だが、これだけでは物足りないことは、
ここまでのご説明で自明であろう。
「 お呼びでない 」状態
和訳時に、能動態 (求めていない )か
受動態 (求められていない) にするか、
悩みどころ。
文脈ごとに検討の上、和訳するとよい。
◆ 実例を挙げる。 すべて実際に使われたもの。
これらが分かれば、基本はOK。
- “an unsolicited job offer”
( 勝手に届いた仕事のオファー)
– - “an unsolicited advice”
( おせっかいな忠告)
– - “an unsolicited bid”
( 売却予定のない、買収の提案)
※ 後述 「 敵対的TOB 」も参照
– - “unsolicited remarks”
( 問わず語り ) (余計な発言)
– - “We do not accept unsolicited visits.”
( 突然のご来訪はご遠慮願います。)
– - “I treat unsolicited gifts with caution.”
( 勝手に届いたプレゼントは、注意して取り扱います。)
– - “We should be cautious of unsolicited emails.”
( 一方的に届いたメールに注意するべき。)
– - “Company X is preparing to fend off
an unsolicited takeover bid.”
( X社は一方的な株式公開買い付けを
かわす準備をしている。) ※ 「 敵対的TOB 」を示唆
– - “We use no unsolicited manuscripts.”
( 本誌は、持ち込み原稿 を採用しません。)
– - “The caliber of work matters for
unsolicited manuscripts.”
( 持ち込み原稿 は品質が重要です。)
– - “All unsolicited manuscripts will be returned
to sender unopened.”
( すべての 持ち込み原稿 は、未開封のまま、
返送いたします。)
– - “Don’t feel obligated to reply to
unsolicited emails.”
(一方的に届いたメールに返信する
義務はないと考えてよい。)
– - “Your comment was unsolicited,
offensive and disgusting.”
(あなたの発言は、お呼びでなく、
侮辱的で不快でした。)
–
◆ 「 持ち込み原稿 」のくだりは、今もよく見かける。
雑誌などの奥付近辺に小さく書かれている。
< 免責事項 ( disclaimers ) > の一種である。
売文業の厳しさは、英文の世界にも当然存在する。
ー
【類似表現】
“No need.”
https://mickeyweb.info/archives/3363
(不要です。)
“unwanted”
https://mickeyweb.info/archives/8506
(望まれない、不要な)