Unsolicited
2020/10/22
要求されていない、求められていない、お呼びでない
< 注意書き >や< 免責文言 >で、
よく見かける形容詞。
ぴたりと対応する日本語がないから困る。
◇ イメージすべきは「持ち込み原稿」
【定訳】 unsolicited manuscripts
すなわち、依頼や応募ではなく、本人が
一方的に 持ち込んだ原稿。
※ 例文参照
【語源】
- 接頭辞 “un“(~がない)
- 形容詞 “solicited“(意見を求められる)
の合成語
”unsolicited”
not asked for and often not wanted.
(ロングマン、LDOCE6)
【発音】 ʌ̀nsəlísitəd
【音節】 un-so-lic-it-ed (5音節)
英英辞典の語釈はシンプル。
日本語にぴたりと該当する語彙は見当たらない。
すんなり理解しにくく、難しいと感じてしまう。
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この点、形容詞 “vulnerable“、名詞 “threshold” に
共通する思い違い。
【参照】
・ 対となる日本語がなければ、イメージで理解
・ 日本語にない文法は、原文で慣れる
発音にも癖があり、日本人にはなかなか難しい。
「L」にアクセントを置く。
【発音】 ʌ̀nsəlísitəd
【音節】 un-so-lic-it-ed (5音節)
5音節 なのもきつい。
「音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。
日本語の場合、原則として「仮名一字が1音節」。
そのため、音節を意識する機会は乏しい。
→ 音節の差異が顕著な日英比較は、”integrity” 参照
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◆ “unsolicited” の意味することは、こんな具合。
当方が要求したものではない。
あなたが勝手に送り付けたのだから、
我々に責任は一切ない。
一方的に提出してきたものを、こちらが
どうしようと文句は言わせないよ。
事前にそれを理解しておいてね。
上記ハイライト3つが、本来の “unsolicited” を表す。
実務では、たった1語で、赤枠全体のニュアンス
を盛り込む場合が多い。
だから、”unsolicited” は重宝される。
◇ 日常使用での趣旨は、歯止め と 牽制
<注意書き>や<免責文言>に明記すれば、
トラブル防止に役立つ。
「勝手に提出された(unsolicited)ものを、
当方がどう扱おうとも、クレームの対象外」
冒頭にて和訳に困ると記したのは、
“unsolicited” が、上掲の太字部分すべての
意味合いを持つからである。
- 要求されていない
- 求められていない
が定訳に近い。
だが、これだけでは物足りないことは、
ここまでのご説明で自明であろう。
「お呼びでない」状態
和訳時に、能動態(求めていない)か
受動態(求められていない)にするか、
悩みどころ。
文脈ごとに検討の上、和訳するとよい。
◆ 実例を挙げる。 すべて実際に使われたもの。
これらが分かれば基本はOK。
- “an unsolicited job offer”
(勝手に届いた仕事のオファー)
– - “an unsolicited advice”
(おせっかいな忠告)
– - “unsolicited remarks”
(問わず語り)(余計な発言)
– - “We do not accept unsolicited visits.”
(突然のご来訪はご遠慮願います。)
– - “I treat unsolicited gifts with caution.”
(勝手に届いたプレゼントは、注意して取り扱います。)
– - “We should be cautious of unsolicited emails.”
(一方的に届いたメールに注意するべき。)
– - “Company X is preparing to fend off
an unsolicited takeover bid.”
(X社は一方的な株式公開買い付けを
かわす準備をしている。) ※ 「敵対的TOB」を示唆
– - “We use no unsolicited manuscripts.”
(本誌は、持ち込み原稿を採用しません。)
– - “The caliber of work matters for
unsolicited manuscripts.”
(持ち込み原稿は品質が重要です。)
– - “All unsolicited manuscripts will be returned
to sender unopened.”
(すべての持ち込み原稿は、未開封のまま、
返送いたします。)
– - “Don’t feel obligated to reply to
unsolicited emails.”
(一方的に届いたメールに返信する
義務はないと考えてよい。)
– - “Your comment was unsolicited,
offensive and disgusting.”
(あなたの発言は、お呼びでなく、
侮辱的で不快でした。)
–
◆ 「持ち込み原稿」のくだりは、今もよく見かける。
雑誌などの奥付近辺に小さく書かれている。
< 免責事項(disclaimers)> の一種である。
売文業の厳しさは、英文の世界にも当然存在する。
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【類似表現】
“No need.”
https://mickeyweb.info/archives/3363
(不要です。)
“unwanted”
https://mickeyweb.info/archives/8506
(望まれない、不要な)