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Glare

      2020/06/01

にらみつける

  • President Glares At Fox News’ X After Y Questions
    (大統領、Y事件を質したフォックスニュースのXをにらみつける)
  • PM GLARES at X after tense BBC interview
    (緊迫したBBCインタビュー後、Xをにらみつける首相)
  • X glares at Y after mentioning police shooting
    (Xが警官発砲事件に触れたYをにらみつける)

  • X glares at heckler during NFL Draft
    (NFLドラフト中、Xがやじり屋をにらみつける)

  • Actress X glares at Supreme Court nominee
    throughout hearing
    (女優X、米最高裁判事候補を審問中にらみつける)


※「X」「Y」→ 原文では人名または件名

※「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語

いずれも今年2019年発表のニュース見出し。

目に角を立てているのは、各界の名士。
各記事内の写真や動画を確認すると、本当ににらんでいる。
本文中、”icy stare” や “icy glare” なども顔を出す。

目を三角にした著名人。
これが見出しを飾るのだから、世間の好奇心をくすぐる。
滑稽味を覚える一方で、メディアのえげつなさを感じたりもする。


◆ 上掲例文の “glare” は、自動詞「にらみつける」。

【発音】  glέər

他動詞「にらみつけて」もあるが、こちらはマイナー用法。
多用される「他動詞」表現は、以下3つ。
可算名詞 “glare”(にらみ)で換言した文も添えてみる(→)。

  • “My wife glared hate at me.”
    → “My wife gave me a glare of hate.”

    (妻が憎しみの目を私に向けた。)
  • “My daughter glared anger at me.”
    “My daughter gave me a glare of anger.”
    (娘が怒りの目を私に向けた。)

  • “My son glared defiance at me.”
    → “My son gave me a glare of defiance.”

    (息子が反抗の目を私に向けた。)

過去形の動詞 “glared” の直後に目的語(下線部)がある。
こうした決まり表現が目立つ
のが、他動詞 “glare” の特色。

片や、多彩な広がりを見せるのが自動詞 “glare”。

冒頭の例文すべてにおいて、”glares” 直後に前置詞 at” がある。
動作の方向性を指す “at”(~に向けて)(~に対して)。
前置詞 “at” の基本そのもの。

自動詞(intransitive verb)は、自己完結の動作を表す。
すなわち、目的語がなくても、意味が完結する。

目的語がない代わりに、前置詞を使う場合が多い。

【参考】   ※ 外部サイト
自動詞と他動詞の違いをイラストで説明
動詞の直後に前置詞や副詞が続くのは自動詞

◆ 自動詞 “glare” に続く前置詞は “at” が中心となる。

オックスフォード コロケーション辞典』の示す
前置詞は、次の3つ。

■ 自動詞 “glare”

  1. at
  2. down at
  3. up at

Oxford Collocations Dictionary for
Students of English
“(アプリ版)より

和訳を付すると、

  1. glare at (~をにらみつける)
  2. glare down at (~を見下して、にらみつける)
  3. glare up at (~を見上げて、にらみつける)

後ほど詳しく見ていく。


◆ 語源は、中期英語「輝く」(glaren)。

初出は、動詞が13世紀、名詞が15世紀。

ぎらぎら」なイメージを貫くのが “glare” の持ち味。
「きらきら光る」でなく、どぎつく「ぎらぎら 輝く」。

ぎらぎら

  • 《副》
    (「と」を伴って用いることもある)
    強く光り輝くさまを表わす語。
    「きらきら」にくらべてどぎついさまに
    いう場合が多い。
    (精選版 日本国語大辞典)

  • 1.  強い光が小刻みに連続して輝く様子。
    強すぎる光や、強くはないが不快に感じる光をいう
    場合が多い。
    特に「ぎらぎら」で形容される目の輝きは、野望や
    邪(よこしま)な欲望、激情の現れであることが多い。
    そこから、光の様子としてではなく、情熱や欲望など
    がみなぎってどぎつい感じのする様子をたとえていう
    場合にも用いられる。
    2.  あぶらが光る様子。  また、脂ぎった様子。
    講談社 擬音語・擬態語辞典

※ ハイライトは引用者

生き生き澄んで美しくきらめく「きらきら」。
目を射る不気味な強烈さを放つ「ぎらぎら」。

清音と濁音の違いだが、印象は大違い。

濁音の「ぎ」は、声帯振動を伴う子音 [ɡʲi]。
“glare” も、声帯振動を伴う子音 [ɡ] の破裂音
であり、具体的には「有声軟口蓋破裂音」。

実際に発音してみると、「ぎらぎら」と “glare”
の語感は似ていると思うが、いかがだろう。

とはいえ、”glare” は「L」と「R」入り。
私たち日本人にはなかなか難しい。

【発音】  glέər

アクセントの「」で、上顎前歯の裏側に舌を打ちつける。
そのまま、クルッと強めの巻き舌に。

1音節なので、ゲロする勢いで「グァ」と一気に吐き出す。

※ 「音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。
日本語の場合、原則として「仮名一字が1音節」。
そのため、音節を意識する機会は乏しい。


◆「ぎらぎら」した語感と意味合いが日英で重なり合う上、
派生の流れも分かりやすい。

  語源は “glaren” = 中期英語「輝く」 

語源」→「ぎらぎら 照り付ける」→「ぎらぎら にらみつける

日本語から考えても、すんなり筋が通る感がある。

おまけに、用途もかなり共通するのは、これまでの例文より明らか。

◆ “glare” の基本的意味は、

– 名詞「ぎらぎらする光(不可算)」「にらみ(可算)」
– 自動詞 「ぎらぎら輝く」「にらみつける
– 他動詞 「にらみつけて」 ※ マイナー用法

3大学習英英辞典(EFL辞典)の語釈は、次の通り。

■ まず、名詞から。

“glare” 

  • 1. [singular, uncountable]
    a bright unpleasant light which hurt your eyes.
    2. [countable]

    a long angry look.
    (LDOCE6、ロングマン)

  • 1. [uncountable, singular]
    a very bright, unpleasant light.
    2. [countable]

    a long, angry look.
    (OALD9、オックスフォード)

  • 1. [countable]
    a long, angry look.
    2. [uncountable]

    unpleasantly bright or strong light.
    (CALD4、ケンブリッジ)

    【発音】
      glέər

※ ハイライトは引用者

「にらみつける」の名詞「にらみ」は、可算名詞。
一様に “a long, angry look” と説明する

違いはコンマの有無のみの酷似ぶり。

ぎらぎらする光」は、不可算名詞。
“LDOCE6” と “OALD9” は、”singular” を併記している。

これは「単数名詞」のことで、単数形で使われるのが
一般的な名詞。 “S” または “sing” と略記される。

エネルギーとしての「光」は、不可算名詞が基本。
自然か人工かは、可算・不可算の決め手にならない。
人工でも、物理的なエネルギーである光は、不可算。

この区別は、“come to light” で詳述した。

全3辞書が “uncountable” と明記するように、
“glare” の「ぎらぎらする光」は、不可算名詞。

■ 次いで、動詞 “glare”。

基本的には名詞の語釈と変わらない。

“glare” 

  • [intransitive]
    1. to look angrily at someone for a long time.
    2. [always + adverb/preposition]

    to shine with a very strong bright light
    which hurts your eyes.
    (LDOCE6、ロングマン)

  • 1. [intransitive]
    to look at somebody/something in an angry way.
    2. [intransitive]

    to shine with a very bright unpleasant light.
    (OALD9、オックスフォード)

  • 1. [intransitive]
    to shine too brightly.
    2. [intransitive]

    to look directly and continuously at someone
    or something in an angry way.
    (CALD4、ケンブリッジ)

    【発音】
      glέər

※ 赤字は引用者

名詞同様、軒並みシンプルな語釈。
キーワードの「ぎらぎら」に「angry」を追加したい。

一律に自動詞(intransitive)だけを記載する。
他動詞(transitive)は見当たらない。
ゆえに「マイナー用法」と既述した点を裏付けている

赤字にした “always + adverb/preposition “(LDOCE6)
とは、「常に
副詞または前置詞が後に続く」の意。

(プラス)→「足す」だから「後に続く」
 / (スラッシュ)→「または」

  • always + 副詞(adverb)
    または
  • always + 前置詞(preposition)
    ということ

【参照】  “(every) now and again / then

先ほどの『オックスフォード コロケーション辞典
の黄枠内を指す内容である。

改めてまとめると、 

■ 自動詞 “glare”

  1. glare at (~をにらみつける)
    → 前置詞 “at” 
  2. glare down at (~を見下して、にらみつける)
    → 副詞 “down” + 前置詞 “at” 
  3. glare up at (~を見上げて、にらみつける)
    → 副詞 “up” + 前置詞 “at” 
  • 前置詞 “at
    動作の方向性を指す「~に向けて」「~に対して」
  • 副詞 “down
    「下に」
  • 副詞 “up
    「上に」

先に名詞をご紹介したものの、重要度と頻出度は同等。
LDOCE6の指標によれば、名詞・動詞ともに、

・ 重要 :<6001~9000語以内>
・ 書き言葉の頻出:3000語圏外
・ 話し言葉の頻出:3000語圏外

英単語全体から見れば、大して重要でもなく、
頻出でもなく、特筆に値しないレベルと言える。


◆ にもかかわらず、”glare” はどこか馴染み深い気がする

その理由に、語感・音節・意味合い・成り立ちを挙げた。

もう一つ加えて、カタカナ「グレア」を見聞きする機会
が増えている傾向を指摘しておきたい。

  グレア【glare】

  • 《生》
    視野における照度の分布が不均等なために、
    対象が見えにくくなったり、一過性の盲目状態
    になったりする現象。
    強い光を見たとき、また水晶体・ガラス体に混濁が
    あるときなどに起こる。

    (大辞林 第三版)

  • 輝度分布の偏りや極端な輝度対比などによって
    感じられるまぶしさ

    (広辞苑 第七版)

専門的で理解しにくい解説だが、実例は身近にある。

  • コンピュータ・スマホの画面(screen glare)
    → 反射防止にはノングレア(アンチグレア)加工
  • 車両のヘッドライト(headlight glare)
    → まぶしい光による視界不良や雨天の路面反射

  • サングラス(glasses glare)
    → ぎらつきを防ぐ偏光レンズの採用

  • 電気スタンド(lighting glare)
    → 机や紙に反射して見えづらい照明

  • レーシック手術後のグレア現象(post-LASIK glare)
    → 夜間光がまぶしく見える症状

とりわけ、自動車のヘッドライトとレーシックのグレアは、
安全・健康に直結するため、規制や基準が課題となっている。

◆ 本稿では、自動詞「にらみつける」を主に検討した。

– 名詞「ぎらぎらする光(不可算)」「にらみ(可算)」
– 自動詞 「ぎらぎら輝く」「にらみつける
– 他動詞 「にらみつけて」 ※ マイナー用法

その他の語義は、「ぎらぎら」や「グレア」を想起すれば、
比較的把握しやすいと考えたから
である。

さらに、ニュース報道としての価値を考慮した。

既に述べたように、有名人が目を剥く姿は話題を呼ぶ。
良し悪しは別としても、”glare” の描写がぴったりな場面は、
確かに存在する。

まさしく冒頭に掲げた見出しの通り。

そんなニュースに出てくる目つきを見てみると、胸中穏やか
ならずどころか、心底 “angry” なのがよく分かる。

目は口ほどに物を言う

言葉に出さなくても、目の表情で相手に伝える
ことができる。

また、言葉でうまくごまかしても、
目に本心が表れるものである。

(大辞林 第三版)

※ 下線は引用者

英文の言い回しはいくつもある。 有力なのは、

  • “The eyes are the window to the soul.”
    ※ “windows” 版もある
  • “The eyes are eloquent as the tongue.”
    ※ “mouth” 版もある

  • “Eyes speak louder than words.”

普通に生きていれば、体験的に知る普遍的な教え。

同趣旨の表現は、シェイクスピア、キケロ、ダ・ヴィンチ、
新約聖書(マタイによる福音書)の言葉にも含まれる。

「目に本心が表れる」とすれば、メディアが “glare” を
取り上げることには、高尚な意義も帯びると推察できる。


◆ 報道メディアによる不要な注目を、”a media glare” と称する。

“the glare of publicity/the media etc”

attention from newspapers and television,
especially when you do not want it.

https://www.macmillandictionary.com

“a publicity glare” とも言う。

注目(≒ にらみ)」は、可算名詞
時に、比喩的な「メディアのぎらぎらする光」の意味合いで
起用され、無冠詞の不可算名詞でも使われている。

SNSの興隆に従い、日頃接するチャンスが増していくはず。
併せて押さえておきたい表現である。

 

 

 

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