Glare
2020/08/01
にらみつける
- President Glares At Fox News’ X After Y Questions
(大統領、Y事件を質したフォックスニュースのXをにらみつける)
– - PM GLARES at X after tense BBC interview
(緊迫したBBCインタビュー後、Xをにらみつける首相)
– - X glares at Y after mentioning police shooting
(Xが警官発砲事件に触れたYをにらみつける)
–
- X glares at heckler during NFL Draft
(NFLドラフト中、Xがやじり屋をにらみつける)
–
- Actress X glares at Supreme Court nominee
throughout hearing
(女優X、米最高裁判事候補を審問中にらみつける)
–
※「X」「Y」→ 原文では人名または件名
◇「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語
いずれも今年2019年発表のニュース見出し。
–
目に角を立てているのは、各界の名士。
各記事内の写真や動画を確認すると、本当ににらんでいる。
本文中、”icy stare” や “icy glare” なども顔を出す。
–
目を三角にした著名人。–
これが見出しを飾るのだから、世間の好奇心をくすぐる。
滑稽味を覚える一方で、メディアのえげつなさを感じたりもする。
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–
◆ 上掲例文の “glare” は、自動詞「にらみつける」。
【発音】 glέər (1音節)
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他動詞「にらみつけて」もあるが、こちらはマイナー用法。
多用される「他動詞」表現は、以下3つ。
可算名詞 “glare”(にらみ)で換言した文も添えてみる(→)。
- “My wife glared hate at me.”
→ “My wife gave me a glare of hate.”
(妻が憎しみの目を私に向けた。)
– - “My daughter glared anger at me.”
→ “My daughter gave me a glare of anger.”
(娘が怒りの目を私に向けた。)
–
- “My son glared defiance at me.”
→ “My son gave me a glare of defiance.”
(息子が反抗の目を私に向けた。)
過去形の動詞 “glared” の直後に目的語(下線部)がある。
こうした決まり表現が目立つのが、他動詞 “glare” の特色。
片や、多彩な広がりを見せるのが自動詞 “glare”。
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冒頭の例文すべてにおいて、”glares” 直後に前置詞 “at” がある。
動作の方向性を指す “at”(~に向けて)(~に対して)。
前置詞 “at” の基本そのもの。
自動詞(intransitive verb)は、自己完結の動作を表す。
すなわち、目的語がなくても、意味が完結する。
目的語がない代わりに、前置詞を使う場合が多い。
【参考】 ※ 外部サイト
・ 自動詞と他動詞の違いをイラストで説明
・ 動詞の直後に前置詞や副詞が続くのは自動詞
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◆ 自動詞 “glare” に続く前置詞は “at” が中心となる。
–
『オックスフォード コロケーション辞典』の示す
前置詞は、次の3つ。
和訳を付すると、
- glare at (~をにらみつける)
- glare down at (~を見下して、にらみつける)
- glare up at (~を見上げて、にらみつける)
後ほど詳しく見ていく。
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◆ 語源は、中期英語「輝く」(glaren)。
初出は、動詞が13世紀、名詞が15世紀。
「ぎらぎら」なイメージを貫くのが “glare” の持ち味。
「きらきら光る」でなく、どぎつく「ぎらぎら 輝く」。
ぎらぎら
- 《副》
(「と」を伴って用いることもある)
強く光り輝くさまを表わす語。
「きらきら」にくらべてどぎついさまに
いう場合が多い。
(精選版 日本国語大辞典)
–
- 1. 強い光が小刻みに連続して輝く様子。
強すぎる光や、強くはないが不快に感じる光をいう
場合が多い。
特に「ぎらぎら」で形容される目の輝きは、野望や
邪(よこしま)な欲望、激情の現れであることが多い。
そこから、光の様子としてではなく、情熱や欲望など
がみなぎってどぎつい感じのする様子をたとえていう
場合にも用いられる。
2. あぶらが光る様子。 また、脂ぎった様子。
(講談社 擬音語・擬態語辞典)
※ ハイライトは引用者
生き生き澄んで美しくきらめく「きらきら」。
目を射る不気味な強烈さを放つ「ぎらぎら」。
清音と濁音の違いだが、印象は大違い。
–
濁音の「ぎ」は、声帯振動を伴う子音 [ɡʲi]。
“glare” も、声帯振動を伴う子音 [ɡ] の破裂音
であり、具体的には「有声軟口蓋破裂音」。
実際に発音してみると、「ぎらぎら」と “glare”
の語感は似ていると思うが、いかがだろう。
とはいえ、”glare” は「L」と「R」入り。
私たち日本人にはなかなか難しい。
【発音】 glέər (1音節)
アクセントの「レ」で、上顎前歯の裏側に舌を打ちつける。
そのまま、クルッと強めの巻き舌に。
1音節なので、腹の底から ゲロする 勢いで、一気に吐き出す。
グレァ
「音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。
日本語の場合、原則として「仮名一字が1音節」。
そのため、音節を意識する機会は乏しい。
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–
◆「ぎらぎら」した語感と意味合いが日英で重なり合う上、
派生の流れも分かりやすい。
–
語源は “glaren” = 中期英語「輝く」
語源「輝く」→「ぎらぎら 照り付ける」→「ぎらぎら にらみつける」
日本語から考えても、すんなり筋が通る感がある。
おまけに、用途もかなり共通するのは、これまでの例文より明らか。
–
◆ “glare” の基本的意味は、
– 名詞「ぎらぎらする光(不可算)」「にらみ(可算)」
– 自動詞 「ぎらぎら輝く」「にらみつける」
– 他動詞 「にらみつけて」 ※ マイナー用法
3大学習英英辞典(EFL辞典)の語釈は、次の通り。
–
■ まず、名詞から。
“glare”
- 1. [singular, uncountable]
a bright unpleasant light which hurt your eyes.
2. [countable]
a long angry look.
(LDOCE6、ロングマン)
–
- 1. [uncountable, singular]
a very bright, unpleasant light.
2. [countable]
a long, angry look.
(OALD9、オックスフォード)
–
- 1. [countable]
a long, angry look.
2. [uncountable]
unpleasantly bright or strong light.
(CALD4、ケンブリッジ)
–
【発音】 glέər (1音節)
※ ハイライトは引用者
「にらみつける」の名詞「にらみ」は、可算名詞。
一様に “a long, angry look” と説明する。
違いはコンマの有無のみの酷似ぶり。
「ぎらぎらする光」は、不可算名詞。
“LDOCE6” と “OALD9” は、”singular” を併記している。
これは「単数名詞」のことで、単数形で使われるのが
一般的な名詞。 “S” または “sing” と略記される。
エネルギーとしての「光」は、不可算名詞が基本。
自然か人工かは、可算・不可算の決め手にならない。
人工でも、物理的なエネルギーである光は、不可算。
–
この区別は、“come to light” で詳述した。
全3辞書が “uncountable” と明記するように、
“glare” の「ぎらぎらする光」は、不可算名詞。
–
■ 次いで、動詞 “glare”。
基本的には名詞の語釈と変わらない。
“glare”
- [intransitive]
1. to look angrily at someone for a long time.
2. [always + adverb/preposition]
to shine with a very strong bright light
which hurts your eyes.
(LDOCE6、ロングマン)
–
- 1. [intransitive]
to look at somebody/something in an angry way.
2. [intransitive]
to shine with a very bright unpleasant light.
(OALD9、オックスフォード)
–
- 1. [intransitive]
to shine too brightly.
2. [intransitive]
to look directly and continuously at someone
or something in an angry way.
(CALD4、ケンブリッジ)
–
【発音】 glέər (1音節)
※ 赤字は引用者
名詞同様、軒並みシンプルな語釈。
キーワードの「ぎらぎら」に「angry」を追加したい。
–
一律に自動詞(intransitive)だけを記載する。
他動詞(transitive)は見当たらない。
ゆえに「マイナー用法」と既述した点を裏付けている。
赤字にした “always + adverb/preposition “(LDOCE6)
とは、「常に副詞または前置詞が後に続く」の意。
—+ (プラス)→「足す」だから「後に続く」
— / (スラッシュ)→「または」
- always + 副詞(adverb)
または - always + 前置詞(preposition)
ということ
【参照】 “(every) now and again / then”
先ほどの『オックスフォード コロケーション辞典』
の黄枠内を指す内容である。
改めてまとめると、
■ 自動詞 “glare”
- glare at (~をにらみつける)
→ 前置詞 “at” - glare down at (~を見下して、にらみつける)
→ 副詞 “down” + 前置詞 “at”
- glare up at (~を見上げて、にらみつける)
→ 副詞 “up” + 前置詞 “at”
- 前置詞 “at”
→ 動作の方向性を指す「~に向けて」「~に対して」 - 副詞 “down”
→「下に」 - 副詞 “up”
→「上に」
先に名詞をご紹介したものの、重要度と頻出度は同等。
LDOCE6の指標によれば、名詞・動詞ともに、
・ 重要度 :<6001~9000語以内>
・ 書き言葉の頻出度:3000語圏外
・ 話し言葉の頻出度:3000語圏外
英単語全体から見れば、大して重要でもなく、
頻出でもなく、特筆に値しないレベルと言える。
–
–
◆ にもかかわらず、”glare” はどこか馴染み深い気がする。
–
その理由に、語感・音節・意味合い・成り立ちを挙げた。
もう一つ加えて、カタカナ「グレア」を見聞きする機会
が増えている傾向を指摘しておきたい。
グレア【glare】
- 《生》
視野における照度の分布が不均等なために、
対象が見えにくくなったり、一過性の盲目状態
になったりする現象。
強い光を見たとき、また水晶体・ガラス体に混濁が
あるときなどに起こる。
(大辞林 第三版)
–
- 輝度分布の偏りや極端な輝度対比などによって
感じられるまぶしさ。
(広辞苑 第七版)
専門的で理解しにくい解説だが、実例は身近にある。
- コンピュータ・スマホの画面(screen glare)
→ 反射防止にはノングレア(アンチグレア)加工
– - 車両のヘッドライト(headlight glare)
→ まぶしい光による視界不良や雨天の路面反射
–
- サングラス(glasses glare)
→ ぎらつきを防ぐ偏光レンズの採用
–
- 電気スタンド(lighting glare)
→ 机や紙に反射して見えづらい照明
–
- レーシック手術後のグレア現象(post-LASIK glare)
→ 夜間光がまぶしく見える症状
とりわけ、自動車のヘッドライトとレーシックのグレアは、
安全・健康に直結するため、規制や基準が課題となっている。
–
◆ 本稿では、自動詞「にらみつける」を主に検討した。
– 名詞「ぎらぎらする光(不可算)」「にらみ(可算)」
– 自動詞 「ぎらぎら輝く」「にらみつける」
– 他動詞 「にらみつけて」 ※ マイナー用法
その他の語義は、「ぎらぎら」や「グレア」を想起すれば、
比較的把握しやすいと考えたからである。
さらに、ニュース報道としての価値を考慮した。
–
既に述べたように、有名人が目を剥く姿は話題を呼ぶ。
良し悪しは別としても、”glare” の描写がぴったりな場面は、
確かに存在する。–
まさしく冒頭に掲げた見出しの通り。
そんなニュースに出てくる目つきを見てみると、胸中穏やか
ならずどころか、心底 “angry” なのがよく分かる。
目は口ほどに物を言う
言葉に出さなくても、目の表情で相手に伝える
ことができる。
また、言葉でうまくごまかしても、
目に本心が表れるものである。
(大辞林 第三版)
※ 下線は引用者
英文の言い回しはいくつもある。 有力なのは、
- “The eyes are the window to the soul.”
※ “windows” 版もある
– - “The eyes are eloquent as the tongue.”
※ “mouth” 版もある
–
- “Eyes speak louder than words.”
普通に生きていれば、体験的に知る普遍的な教え。
同趣旨の表現は、シェイクスピア、キケロ、ダ・ヴィンチ、
新約聖書(マタイによる福音書)の言葉にも含まれる。
「目に本心が表れる」とすれば、メディアが “glare” を
取り上げることには、高尚な意義も帯びると推察できる。
–
–
◆ 報道メディアによる不要な注目を、”a media glare” と称する。
“the glare of publicity/the media etc”
attention from newspapers and television,
especially when you do not want it.
“a publicity glare” とも言う。
「注目(≒ にらみ)」は、可算名詞。
時に、比喩的な「メディアのぎらぎらする光」の意味合いで
起用され、無冠詞の不可算名詞でも使われている。
SNSの興隆に従い、日頃接するチャンスが増していくはず。
併せて押さえておきたい表現である。