プロ翻訳者の単語帳

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Behind closed doors

      2019/05/29

非公開で、水面下で   

“door” は可算名詞。

よって、<不定冠詞+単数形> の
“behind a closed door
とも言う。

しかし、表題に掲げた<無冠詞かつ複数形 “doors”>
の方が圧倒的に使われる。辞書でもそう。

4大学習英英辞典(EFL辞典)は、この通り。

“behind closed doors”

if something happens behind closed door, it
happens in private and the public are not allowed in.
(LDOCE6、ロングマン)

without the public being allowed to attend, or
know what is happening; in private.
(OALD9、オックスフォード)

If something happens behind closed doors,
it is hidden or kept secret from public view
.
(CALD4、ケンブリッジ)

If people have talks and discussions behind
closed doors, they have them in private because
they want them to be kept secret.

(COB9、コウビルド)

キーワードは、”public” 及び “private“。
両者が<対>になる基礎知識は、中級学習者ならご存知だろう。

ここでの意味は、

  • public(公衆用の)※ 形容詞
    public view(公衆の目、一般公開)
  • the public(一般の人々)※ 名詞
  • in private(非公開で)

これだけ見ても、”behind closed doors” の大要はつかめる。

◆ 続いて、3語の分析。 発音はクリック。

  • behind(~の後ろに)※ 前置詞
  • closed(閉まった)※ 形容詞
  • door(ドア)※ 可算名詞

したがって、直訳は「閉まったドアの後ろに」。
ドアの正面側から見れば「閉まったドアの向こうに」。
このように、立ち位置次第で和訳が違ったりする。

いずれにせよ、視点はドアの向こうの閉ざされた部屋にある。
すなわち「密室」を意味するのが、この表現のポイント

「お尻」の英語表現  

お尻の表現はさまざま。

下品さと隣り合わせなのが、日英共通の持ち味。
排泄物の出口だから無理もない。

ゆえに、普段用と婉曲表現がそろっている。

お尻は、後ろ・背後( = behind)に位置する
ため、婉曲的に “behind” と称す。

同じ視点で、”rear” または “rear end” とも言う。
リアシート(後部座席)、リアミラー(バックミラー)

同様に、”backside” とも。 婉曲語なので、下品さはない。

“behind” の語源は、古英語「後ろに」(behindan)。
お尻に誂え向きの成り立ちである。

image.png
buttock(s) が最も一般的。
単数形と複数形が使われている。

“buttock(s)” を省いたbutt(s) もよく出てくる。
これを「下品な言い方」と述べる英和辞典もある。
例えば、『ジーニアス英語大辞典』。

しかし、こう断定できるほど下品さはなく、普通に
使われている。せいぜい「尻」「けつ」にとどまる。
そのため、次の解釈の方が適切だと考える。

(buttは)ass ほど下品な語ではないので、
慣用的表現で ass の代わりに用いられる
ことがある。

『ランダムハウス英和大辞典 第2版』

bottom とも言う。これも婉曲的な言い回し。
この場合は単数形。 略して bum。下品さはない。
※ 衣類の「ボトム」(ズボン、スカート)は、
複数形 “bottoms” が通例

卑語手前の ass(けつ)は、私的場面で見聞きする。
asshole は「けつの穴」。

両方とも、「ばかやろう」「くそやろう」「あほったれ」
など罵詈雑言で多用される。 典型的な悪口の印象が強い。
当然、下品である。

そもそも「けつ(尻・穴」」は、「あな(穴)」の意から
派生。  音読みで「けつ」だから、俗にお尻を表すように。
(『大辞林 第三版』による)

したがって、「けつの穴」は「穴の穴」になり、
素直に書き出すと “asshole hole” になるかもしれない。
無論、”asshole” 1語で「けつの穴」が正しい。

普段遣いはbutthole または anus(医学用語)。

日常会話に「肛門」が顔を出すことは珍しいせいか、
とかく罵倒用 “asshole” の出番が目立つ気がする。

“ass”、”asshole” は下品な表現に違いないものの、
bleep out“(放送禁止用語)
の対象から外す報道メディアが多い。

卑語 “fuck” などと同格に至らないのは確実。

【参照】”private parts“(陰部)

尾籠な話はこれくらいにして、本題に戻る。

◆ “behind closed doors” は、ドアの向こうの「密室」
がポイントと上述した。

 みっしつ【密室】
しめきってあって、出はいりのできない部屋。また、
中の様子のわからない部屋。
(三省堂国語辞典 第七版)

※ 下線は引用者

下線「中の様子のわからない」が「非公開」を示唆する。
次の「水面下」とも重なる。

 すいめんか【水面下】
1. 水の中。水中。
2. 転じて、隠れて見えない所。表面には現れない部分。
(大辞林 第三版)

※ 下線は引用者

下線部「わからない」「見えない」「現れない」のは、
先述の “the public”(一般の人々)にとってである。

2語をハイフンをつなぎ、複合形容詞として、
「非公開の」「密室の」「水面下の」を意味する
表現もある。

“closed-door”
private; barred to members of the public.
→ a closed-door meeting
Collins English Dictionary, 12th Edition

“a closed-door meeting” は「密室会議」の定訳でもある。

image.png閉まったドアの向こうで、なんやかんや … 非公開、水面下、秘密

上図のように、密室で話し合う密会をイメージすると理解しやすい。

 

◆ 意味だけ見れば “in private” で置き換えることができる。

現に同義扱いする辞書が多い(上掲EFL辞典)。

だが、“in private” が誰でも気軽に使える常用語
なのに対し、”behind closed doors” の頻出分野は
偏っているのが実態である。

“behind closed doors” の主な用途
政治・経済・外交・ビジネス

「ねぇ、今夜デートしない?」と逢い引きするのも、
「密会」に違いない。この場合、”in private” はよいが、
“behind closed doors” はそぐわない。

つまり、ランデブーなど純粋に個人的な集いに
似つかわしくないのが、”behind closed doors”。

先の絵図及び直訳「閉まったドアの後ろに」からも、
「契約」がちらつく物々しい雰囲気が伝わる。
一つ間違えると、命にかかわるような殺伐たる光景。

もともと、米国のジャーナリズム、すなわち
報道メディアから定着した表現である。

“behind closed doors”
JOURNALISM
If something is done behind closed door,
it is done in private.

* JOURNALISM = used mainly in newspapers,
television, and radio

Collins COBUILD Idioms Dictionary, 3rd ed.

特ダネ狙いのメディアから広まったのだから、
もとより日常茶飯事には不釣り合いである。

存在すら知られていない密かな会合。
部外者は立入禁止の施錠した密室。
目張りをして、見張りを立てる。

イメージとして、こんな様相。
公開なんてとんでもない。

あくまでも水面下に隠れて、着々と進行する
性質のものであるから、表沙汰になる契機
の大半が「スクープ」と「リーク」である。

  スクープ【英 scoop】
1. 新聞・雑誌で、他社を出し抜いて、重大な
事実をつかみ、それをいちはやく記事にする
こと。また、その記事。特ダネ。

  リーク【英 leak】
2. 意図的に機密などを漏らすこと。

(精選版 日本国語大辞典)

 

◆ “behind” つながりで、似た言い回しに
behind the scenes” がある。

定訳は「舞台裏で」。
次のハイライト部がそのまま該当する。
「水面下で」「黒幕的に」と和訳されたりもする。

“behind the scenes”

secretly, while other things are happening publicly.
(LDOCE6、ロングマン)

1. in the part of a theatre, etc. that the public
does not usually see.
2. in a way that people in general are not aware of.
(OALD9、オックスフォード)

1. backstage
2. in private or in secrecy; not for public knowledge.
Webster’s New World College Dictionary, 5th Edition

※ 下線は引用者

英英辞書を比べる限り、表題と大差ない。
これまで示した複数の語釈がそれを物語る。

しかし、実用場面を調べると、趣を異にする
ケースが多い。

in private” 同様、カジュアルな場面で使える
ばかりでなく、秘匿の度合いに差が生じることが多い。

定訳が「舞台裏で」なのは、それもそのはず、
“scenes” は「(劇などの)場面」を指す。
「ラブシーン」「ラストシーン」のそれ。

<お尻>で強調したように、”behind” は「後ろ」。
それゆえ、直訳は「場面の後ろに」。
転じて「舞台裏」。

ジャーナリズム発祥の “behind closed doors” に対し、
演劇から普及した熟語なのである。

もっとも、芸能もビジネスなので、重なる用途も数多い。
さらに、政経・外交記事でも “behind the scenes” は
使われる。

決定的な違いは、「舞台裏」があらかじめ公開
する前提で設営される場合が多々ある点である。

「すっぱ抜く」「垣間見る」舞台裏であれば、
“behind closed doors” 寄りかもしれない。

ところが、例えば<DVD特典>に含まれる
“behind the scenes” となれば、
当初から公開目的で撮影しているのが普通。

実際、今や興行面を補う一大ビジネスになっている。
DVDの他、書籍・雑誌、特集番組、特設ウェブサイト
などを通じて、客席(= the public)から見えないはずの
<秘密の舞台裏>が堂々披露され、ファンを魅了している。

一方の “behind closed doors” は公開を意図しない。
先に触れた通り、「スクープ」や「リーク」が機縁で
世に出る事例が一般的。

<舞台裏>と<締め切った室内>の開放感の違いからも、
以上の表現の違いを感じ取ることができるだろう。

【例】 ※ メリアムウェブスターの新春恒例の記事
・ 2018 Word of the Year: Behind the Scenes
・ 2017 Word of the Year: Behind the Scenes
・ 2016 Word of the Year: Behind the Scenes
・ 2015 Word of the Year: Behind the Scenes
・ 2014 Word of the Year: Behind the Scenes

 

◆ 今月2018年11月発表のニュース見出しをご紹介。

“Councillor apologizes for discussing
own pay behind closed doors
(自分の報酬を秘密交渉した議員が謝罪)

“XX will fight on behind closed doors
(XXは密かに戦い続ける)

“25 Things That Really Happen Behind
Closed Doors At Airports”
(空港の舞台裏で現実に起こる25の出来事)

“President to monitor election results
from behind closed-doors
(大統領が選挙結果を秘密裏に監視)

“Advisory Council Holds First Meetings
Behind Closed Doors
(審議会が非公開で初会合)

“Ethics Committee meets behind
closed doors
(倫理委員会が非公開の会合開催)

“Coach T not concerned about playing
behind closed doors
(Tコーチは非公開試合を意に介さず)

※「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語

 

【関連表現】※ 前置詞 “behind” つながり

 

 

 

 

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