Behind closed doors
2022/03/07
非公開で、 水面下で
” behind a closed door “
とも言う。
しかし、表題に掲げた < 無冠詞 かつ 複数形 “doors” >
の方が圧倒的に使われる。
辞書でもそう。
4大学習英英辞典( EFL辞典 )は、この通り。
“ behind closed doors ”
■ if something happens behind closed door, it
happens in private and the public are not allowed in.
( LDOCE6、ロングマン )
–
■ without the public being allowed to attend, or
know what is happening; in private.
( OALD9、オックスフォード )
–
■ If something happens behind closed doors,
it is hidden or kept secret from public view.
( CALD4、ケンブリッジ )
–
■ If people have talks and discussions behind
closed doors, they have them in private because
they want them to be kept secret.
( COBUILD9、コウビルド )
–
キーワードは、” public ” 及び ” private “。
両者が < 対 > になる基礎知識は、中級学習者 ならご存知だろう。
ここでの意味は、
- public ( 公衆用の ) ※ 形容詞
→ public view ( 公衆の目、一般公開 )
– - the public ( 一般の人々 ) ※ 名詞
– - in private ( 非公開で )
これだけ見ても、” behind closed doors ” の大要はつかめる。
–
◆ 続いて、3語の分析。 発音はクリック。
したがって、直訳は「 閉まったドアの後ろに 」。
ドアの正面側から見れば「 閉まった ドアの向こう に 」。
このように、立ち位置次第で和訳が違ったりする。
いずれにせよ、
視点は ドアの向こう の閉ざされた部屋
すなわち 「 密室 」を意味するのが、この表現のポイント。
ー
■ 「 お尻 」 の英語表現
お尻の表現はさまざま。
下品さと隣り合わせ なのが、日英共通の持ち味。
排泄物 の出口だから無理もない。
ゆえに、普段用と婉曲表現がそろっている。
お尻は、後ろ・背後( = behind )に位置する
ため、婉曲的に “ behind ” と称す。
- “He groped her behind on the bus.”
(彼はバス内で彼女のお尻を触った。)
※ ニュース記事より
【参照】 ” behind time “(予定より遅れて)
” behind ” の語源は、古英語「 後ろに 」( behindan )。
お尻にあつらえ向きの成り立ちである。
–
–
可算名詞なので、
■ お尻が2つ以上なら、” behinds “
–
” Don’t be silly. ” 及び ” behind time ” より ↑
–
- “How did ancient people wipe their behinds ? ”
(古代人は、どのようにしてお尻を拭いていたのか。)
–
品のある婉曲表現である。
–
◆ 同じ視点で、” rear ” または ” rear end ” とも言う。
リア シート( 後部座席 )、リア ミラー( バックミラー )のそれ。
同様に、” backside ” とも。
どれも婉曲語なので、下品さはほぼない。
■ 日頃は ” buttock(s) ” が一般的
–
まあ無難ではある。
–
単数形 と 複数形が 使われている
- “He was arrested for touching her buttocks.”
(彼は彼女のお尻を触って逮捕された。)
※ ニュース記事より
” buttock(s) ” を省いた “ butt(s) “ もよく出てくる。
これを「 下品な言い方 」と述べる英和辞典もある。
一例がこちら。
–
《 米略式 》 しり、けつ ( buttocks )
《 ◆ bottomと異なり 下品な言い方 》
–
–
『 ジーニアス英和大辞典 』
大修館書店、2001年刊 ( アプリ版 )
… ” butt1 ” の語釈より
<大修館書店HP>
–
しかし、こう断定できるほど下品さはなく、” butt(s) ”
も、常日頃より使われている。
上記の通り、「 しり 」「 けつ 」にとどまる感じ。
とすれば、さほど下品とは言えないのではないだろうか。
むしろ、次の解釈の方が適切だと私は考える。
–
[ butt は ]
ass ほど下品な語ではないので,
慣用的表現で ass の代わりに用いられることがある。
–
–
『 ランダムハウス英和大辞典 第2版 』
小学館、1993年刊 ( アプリ版 )
… ” butt1 ” の語釈より
–
◆ ” bottom “ とも言う。
これも、婉曲的な言い回し。
- ” My Shiba Inu is scooting his bottom across the floor. ”
( 愛犬の柴が、お尻を床に擦りつけながら、前進している。)
この場合は、単数形。
略して ” bum “。
- ” My girlfriend flashed her bum at me.”
( 恋人がお尻をちらっと脱いで見せた。)
単語自体に、下品さはほとんどない。
◇ 衣類の「 ボトム 」( ズボン、スカート )は、複数形 ” bottoms ” が通例
お尻の割れ目は、 ” bottom cleavage “。
” bottom ” 抜きだと、「 胸の谷間 」 ↑
–
◆ 同じく、下品さの少なめな俗語に ” heinie “。
” bum ” も ” hiney ” も、 悪くても「 けつ 」程度。
何度か全国ニュースにて接したことがあり、卑語でないはず。
◆ 卑語手前 の “ ass ”( けつ )は、私的場面で見聞きする。
“ asshole ” は「 けつの穴 」。
“ butthole ” に比べ、下卑ている。
両方とも、「 ばかやろう 」「 くそやろう 」「 あほったれ 」
などの罵詈雑言で多用される。
典型的な悪口の印象が強い。
当然、下品である。
そもそも「 けつ( 尻・穴 )」は、「 あな( 穴 ) 」の意から派生。
音読みで「 けつ 」だから、俗にお尻を表すように。
–
◆ したがって、「 けつの穴 」は「 穴の穴 」になり、
素直に書き出すと ” asshole hole ” になるかもしれない。
無論、” asshole ” 1語で「 けつの穴 」が正しい。
日常会話に「 肛門 」が顔を出すことは珍しいせいか、
とかく罵倒用 “ asshole ” の出番が目立つ気がする。
” ass “、” asshole ” は下品な表現に違いないものの、
” bleep out “( 放送禁止用語 )の対象外とする
報道メディアが多い。
卑語 ” fuck ” などと、同格に至らないのは確実。
” anus ” は、医学用語なので、世間一般には親しまない。
【参照】 ” private parts “(陰部)
–
◇ 締めに、早口言葉で発音練習。
But a bat bit my butt !
でも コウモリが けつ 噛んだんだ !
–
尾籠な話はこれくらいにして、本題に戻る。
ー
◆ ” behind closed doors ” は、ドアの向こうの「 密室 」
がポイントと上述した。
下線「中の様子のわからない」が「非公開」を示唆する。
次の「水面下」とも重なる。
下線部「わからない」「見えない」「現れない」のは、
先述の “the public”(一般の人々)にとってである。
2語をハイフンをつなぎ、複合形容詞として、
「非公開の」「密室の」「水面下の」を意味する表現もある。
” closed-door “
private; barred to members of the public.
→ a closed-door meeting
–
” a closed-door meeting ” は、「 密室会議 」の定訳でもある。
–
–
閉まったドアの向こうで、なんやかんや … 非公開、水面下、秘密
–
上図のように、密室で話し合う密会をイメージすると理解しやすい。
◆ 意味だけ見れば、” in private ” で置き換えることができる。
–
現に同義扱いする辞書が多い( 上掲EFL辞典 )。
だが、” in private ” が誰でも気軽に使える常用語
なのに対し、” behind closed doors ” の頻出分野は
偏っているのが実態である。
–
” behind closed doors ” の主な用途
政治・経済・外交・ビジネス
–
「 ねぇ、今夜デートしない ? 」と逢い引きするのも、
「 密会 」に違いない。
この場合、” in private ” はよいが、
” behind closed doors ” はそぐわない。
つまり、ランデブーなど純粋に個人的な集いに
似つかわしくないのが、” behind closed doors “。
先の絵図及び直訳「 閉まったドアの後ろに 」からも、
「 契約 」がちらつく 物々しい雰囲気が伝わる。
一つ間違えると、命にかかわるような殺伐たる光景。
もともと、米国のジャーナリズム、すなわち
報道メディアから定着した表現である。
” behind closed doors “
JOURNALISM
If something is done behind closed door,
it is done in private.
* JOURNALISM = used mainly in newspapers,
television, and radio
特ダネ狙いのメディアから広まったのだから、
もとより日常茶飯事には不釣り合いである。
存在すら知られていない密かな会合。
部外者は立入禁止の施錠した密室。
目張りをして、 見張りを立てる。
イメージとして、こんな様相。
公開なんてとんでもない。
あくまでも水面下に隠れて、着々と進行する
性質のものであるから、表沙汰になる契機
の大半が「スクープ」と「リーク」である。
スクープ【英 scoop】
1. 新聞・雑誌で、他社を出し抜いて、重大な
事実をつかみ、それをいちはやく記事にする
こと。また、その記事。特ダネ。
リーク【英 leak】
2. 意図的に機密などを漏らすこと。
( 精選版 日本国語大辞典 )
※ 語釈の該当項のみ引用
◆ ” behind ” つながりで、似た言い回しに
” behind the scenes ” がある。
定訳は「 舞台裏で 」。
次のハイライト部がそのまま該当する。
「 水面下で 」「 黒幕的に 」と和訳されたりもする。
” behind the scenes “
secretly, while other things are happening publicly.
( LDOCE6、ロングマン)
1. in the part of a theatre, etc. that the public
does not usually see.
2. in a way that people in general are not aware of.
( OALD9、オックスフォード )
1. backstage
2. in private or in secrecy; not for public knowledge.
( Webster’s New World College Dictionary, 5th Edition )
※ 下線は引用者
–
英英辞書を比べる限り、表題と大差ない。
これまで示した複数の語釈がそれを物語る。
しかし、実用場面を調べると、趣を異にする
ケースが多い。
” in private ” 同様、 カジュアルな場面で使える
ばかりでなく、 秘匿の度合いに差が生じることが多い。
定訳が「 舞台裏で 」なのは、それもそのはず、
” scenes ” は「( 劇などの )場面 」を指す。
「 ラブシーン 」「 ラストシーン 」のそれ。
「 お尻 」 で強調したように、” behind ” は「 後ろ 」。
それゆえ、 直訳は「 場面の後ろに 」。
転じて、「 舞台裏 」。
ジャーナリズム発祥の ” behind closed doors ” に対し、
演劇から普及した熟語なのである。
もっとも、芸能もビジネスなので、重なる用途も数多い。
さらに、政経・外交記事でも ” behind the scenes ” は
使われる。
決定的な違いは、「 舞台裏 」があらかじめ公開
する前提で設営される場合が多々ある点である。
「 すっぱ抜く 」「 垣間見る 」舞台裏であれば、
” behind closed doors ” 寄りかもしれない。
ところが、例えば 「 DVD特典 」に含まれる
” behind the scenes ” となれば、
当初から公開目的で撮影しているのが普通。
実際、今や 興行面 を補う、一大ビジネスになっている模様。
DVDの他、書籍・雑誌、特集番組、特設ウェブサイト
などを通じて、客席( = the public )から見えないはずの
< 秘密の舞台裏 > が堂々披露され、ファンを魅了している。
–
◆ 一方の ” behind closed doors ” は公開を意図しない。
先に触れた通り、「 スクープ 」や「 リーク 」が機縁で
世に出る事例が一般的。
< 舞台裏 >と< 締め切った室内 >の開放感の違いからも、
以上の表現の違いを感じ取ることができるだろう。
【例】 メリアム ウェブスターの新春恒例の記事
・ Word of the Year ← 名称変更 ( 2020年以降 )
※ 過去分 ” Past Words of the Year ” にも言及
・ 2019 Word of the Year: Behind the Scenes
・ 2018 Word of the Year: Behind the Scenes
・ 2017 Word of the Year: Behind the Scenes
・ 2016 Word of the Year: Behind the Scenes
・ 2015 Word of the Year: Behind the Scenes
・ 2014 Word of the Year: Behind the Scenes
ー
◆ 今月2018年11月発表のニュース見出しをご紹介。
- “Councillor apologizes for discussing
own pay behind closed doors”
(自分の報酬を秘密交渉した議員が謝罪)
– - “XX will fight on behind closed doors”
(XXは密かに戦い続ける)
– - “25 Things That Really Happen Behind
Closed Doors At Airports”
(空港の舞台裏で現実に起こる25の出来事)
– - “President to monitor election results
from behind closed-doors”
(大統領が選挙結果を秘密裏に監視)
– - “Advisory Council Holds First Meetings
Behind Closed Doors”
(審議会が非公開で初会合)
– - “Ethics Committee meets behind
closed doors”
(倫理委員会が非公開の会合開催)
– - “Coach T not concerned about playing
behind closed doors”
(Tコーチは非公開試合を意に介さず)
–
◇ 「 見出し 」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方( 見出し編 )RNN時事英語
【関連表現】 ※ 前置詞 ” behind ” つながり
- ” behind bars ” = 鉄格子の後ろに
https://mickeyweb.info/archives/1177
( 刑務所に入っている )
ー - ” behind the wheel ” = ハンドルの後ろに
https://mickeyweb.info/archives/1239
( 1. 車を運転する 2. 舵取りをする )
ー - ” behind time ” = 時間より遅れて
https://mickeyweb.info/archives/17971
( 予定より遅れて )