Hiatus
2022/05/18
中断、 休止
特に重要でも頻出でもないが、
ニュースには普通に出てくる。
前もって知らなければ、読んでも聞いても
理解不能な単語 ” hiatus “。
字面を見ても、 ヒントは得られず、
どんな発音かすら見当がつかない。
つまり、推測の手がかりは少ない。
したがって、 学習しておかない限り、
音声で聞き取るのは、 ほぼ不可能。
すっと流れてしまい、 単語の存在自体を
認識できない。
耳でとらえられないため、 ニュースで
” hiatus ” が使われたことさえ気づかない。
「 今の単語って、どういう意味 ? 」
と自覚しにくいのが、” hiatus “。
こんな曲者の割に、 中身は比較的単純。
一度学べば、あとは楽ちん。
だから、ここで身につけてしまおう。
–
◆ まず、発音から。 ( クリックで発音 )
haiéitəs ハイ エイ タス
【音節】 hi – a – tus (3音節)
–
音の強弱が顕著で、 日本語から程遠い。
「 3音節 」で、 ど真ん中の「 第2音節 」に強勢( アクセント )。
「音節」( syllable、 シラブル )とは、発音の最小単位のこと。
「 音節 」の日英比較は、” integrity ” で深掘りしている。
ハイ えい タス
「 えいっ ! 」と拳を突き上げ、反復練習するとよい。
これは、 冗談ではない。
私自身、 全身を用いて修得するのが常。
職場でも、 構わずやっている。
–
★★★ 語学の基本は「 真似 」 ★★★
–
とりわけ、
「 発音 」は、 恥ずかしがらずに、
幼児のように、 無邪気に真似る。
英語母語話者( ネイティブ )の口元を、 さらりと
盗み見ながら、学び取っていく姿勢は、とても大事。
口周りこそ、 舌・唇・歯・呼吸間の相互作用が奏でる、
「 発音 」( 調音 )の生産現場だから。
もし対面ならば、
さりげなく、ちらりちらり、そっと、うかがう感触。
これなら、 失礼とまでは言えまい。
よもや、 他人様の唇をこじ開けるわけにはいかない。
あるいは、ご自分のお気に入りのセレブの口元を
じっくりみつめて、 画面越しに真似しましょう。
やや気色悪いが、 私もこうして学んだ。
【参照】 “ smooth out “、 ” integrity ”
–
◆ たんと間違って、ちょっと利口になって、の繰り返し。
恥をかくのは、 当たり前。
その方が、 記憶に残り、 成長できる。–
‐
自分の口 から 出して なんぼの世界
耳で聞くだけの
「 発音 」修行は、
もとより無謀
–
口から排便するようなもの。
× お口で うんこ
–
◆ けれども、 残念なことに、
「 お口で うんこ 」 したがる日本人学習者が、
本当に多い模様。
なぜだろう。
無理なのに。
日本は、「 お口で うんこ 」 を堂々と勧める、
詐欺まがいの英語教材のあふれる 「 教材大国 」。
好例は、「 文法不要 」 「 カタカナで学ぶ 」 「 聞き流すだけ 」。
昔から、 出ては消えての繰り返し。
文法無視で丸暗記する 「 九官鳥 」 「 インコ 」 系は常に人気。
旅行者向けだったら、 これでよい。
【参照】 ” no need “
正確な文法解説には、 日英の文法に精通する高い学力 を要するため、
ネイティブ音声を吹き込んだ素材を売る方が、 手間いらずなのです。
「 文法不要 」の背景には、 両言語の学識が浅すぎる実情がからむ。
日本語と英語の文法を、 ろくすっぽ知らないために、「 文法不要 」。
真っ当な商材で勝負せんとして、 精進されなかったのだろうか。
–
以下、 「 英語を使う仕事に変えるべきか 」 より再掲。
–
–
日本人が書く英語教育系のメルマガを、 私は多数購読している。取り上げる表現及び解説により、 発信者の英語力は推量可能。
めったに使われない英語表現が、 頻繁に記載されていれば、
ご自身の実生活で、 英語は疎遠であることが明らかになる。おそらく、 和英辞典などから抜き出したのだろう。
英語ができるふりを装っても、 結局ばれるわけだ。
真っ当な発信者を探す方が難しい感で、 もう詐欺師だらけ。
詐欺師呼ばわりは失敬だが、 見分けのつかない学習者に、
器量不足の者が企画した商材を売りつけるのは許せない。
お口で 発音
ご自分のお口
を 動かしましょう
◆ きゃっきゃっと童心に戻れる大人は、総じて発音の向上が早い。–
40年以上、 各国の英語学習者と接してきて、 言い切りたくなる。
知らない言葉を口にするのを楽しんでいる様子で、 皆うれしそう。
うきうき胸を躍らせ、 心弾ませて発言しているのが鮮明に分かる。
臆せず、 朗らかにはしゃぐ、 でかい幼児みたいな態度が奏功する。
この点、 日本人学習者は概してシャイすぎるので、 もったいない。
五官と五感 の活用は相当効果があると、自身の経験からも感じる。
- おもしろさにわくわくする ほど、新鮮な喜びにあふれた学び
- 世界が身近に迫り、出会いと可能性がぐっと広がる知的興奮
- この世を見る目が変わり、人生が彩り鮮やかになったりする
これが「 語学 」本来の姿なのである。
【参照】 “「Gmail」で作る単語帳 “、 “「自分の世界」が広がる英語 ”
–
我が国特有の致し方ない事情により、しんどい「 勉強 」
として根付いた有様の英語教育は、 あまりに惜しい。
【参照】 ” conclusive ”
–
–
◆ ” the HIATUS ” という、日本のロックバンドがある。
–
2009年結成。
メディアにはほとんど出てこないが、
ライブやフェスで活躍中。
グループ名は「 ザ ハイエイタス 」と読む。
だが、 このままでは英語ネイティブに通じない。–
【発音】 haiéitəs
【音節】 hi – a – tus (3音節)
第2音節に、 強いアクセント。
何度も「 えいっ! 」と練習すれば、1日で身につく。
–
–
ハィえいタス!
ハィえいタス!
ハィえいタス!
ハイえいタス!
(3音節)
◆ ” hiatus ” は、可算名詞のみ。
–
語源は、ラテン語「 すき間 」( hiātus )。
語源の意味合いを、そのまま引き継ぐのが、
次の基本的意味。
- すき間
- とぎれ
- 中断
- 休止
さらに、
- 脱文
- 脱字
その他、専門用語として、
- 文法 「 母音接続 」
母音が隣接している状態。 ヒアートゥス。
– - 解剖 「 裂孔 」
れっこう。 細胞組織にできた穴や裂け目。
どの意味も、語源「 すき間 」から、どうにかイメージできよう。
こう考えると、多義ではない。
少なくとも、日常的に多用される上記青字は、
語源「 すき間 」に近い。
◆ 多用されるとはいえ、冒頭の通り、重要でも頻出でもない。
ロングマン( LDOCE6 )の重要度・頻出度の指標ではランク外。
- 重要度:9000語圏外
- 書き言葉の頻出度:3000語圏外
- 話し言葉の頻出度:3000語圏外
それでも取り上げる理由は、先述の特色のためである。
すなわち、名詞 ” hiatus ” は、
1. ニュースに通年出てくる
→ ただし、頻出に至らない
2. 読んでも聞いても、意味を推測しにくい
→ 学習しない限り、よく分からない
3. 独特な発音のため、単語認識が困難
→ 聞き取れず、完全にスルーしがち
–
多義ではない点は、 3大学習英英辞典( EFL辞典 )からも明らか。
–
” hiatus ”
- ロングマン( LDOCE6 )
[ countable usually singular ]
1. formal
a break in an activity, or a time during
which something does not happen or exist.
–
2. technical
a space where something is missing,
especially in a piece of writing.
– - オックスフォード( OALD9 )
[ singular ] formal
1. a pause in activity when nothing happens.
2. a space, especially in a piece of writing
or in a speech, where something is missing.
– - ケンブリッジ( CALD4 )
[ C usually singular ] formal
a short pause in which nothing happens
or is said, or a space where something
is missing.
–
【発音】 haiéitəs
【音節】 hi – a – tus (3音節)
※ 下線は引用者
–
OALD9 と CALD4の解説は酷似する。
まあ、よくあること。
下線部はキーワード。
上掲青字にも呼応する。
すべて ” singular ” とある。
「 単数名詞 」( singular noun )を示し、
単数形で使われるのが一般的な名詞。
さらに、3冊とも ” formal ” とある。
正式で、堅めな言い回しを指す。
なんだか、 つかみどころのない印象。
そんな感じを抱くが、 いかがであろうか。
◆ こういう単語の場合、 意味をささっと学んだ後、
すぐに実例を見ていくと、 記憶に残りやすい。
–
ひと休み
–
- “I wanted to take a break.
Now, I’m on a writing hiatus.”
(ひと休みしたかったのです。
現在、書くことを休止中です。)
– - “After a two-month hiatus, he
resumed work as a writer.”
(2ヶ月間の休止後、彼は作家活動を再開した。)
– - “My favorite TV show is on hiatus.”
(好きなTV番組が途切れています。)
– - “I’m on a Facebook hiatus.”
(フェイスブックは休んでいるの。)
– - “I went on hiatus because I almost
burned out.”
(燃え尽きそうになったので、ひと休みしました。)
– - “There was a brief hiatus in the seminar.”
(そのセミナーには、短い中断期間がありました。)
– - “I will go on a social media hiatus.”
(SNSは休止しようと思います。)
◆ ” on leave ” や ” on vacation “( 休暇中 )と同じく、
状態の前置詞 ” on “ を伴うのが最多パターン。
休止中!
–
” on ” の直後に続く場合は 無冠詞 となる点も同じ。
” on tour ” や ” on diet ” にも共通する。
この用法の ” hiatus “、 ” leave “、 ” vacation ” は、
いずれも 可算名詞なので冠詞がつくはず であるものの、
冠詞なしの単数形 が原則。
その理由を文法面から説明する確実な資料が、
なかなか見つからない。
–
■ 主な通説は2つ。
一言でいえば < 習慣的表現 >。
1) フレーズとして「 2語ワンセット 」で定着済み
–
→ ” on a diet ” でも可だが、 無冠詞の方が一般的
2) フレーズ全体で「 機能 」として作用
–
→ ” by mistake “、” by bus “、” by telephone ”
など、手段・理由 の前置詞 ” by ” と似ている。
副詞的な使われ方。
–
本家の一般向け英語サイトでも、 この程度の解説ばかり。
やはり、日本語を母語とする英語教師は必須 なのだ。
【参照】 ” Please be aware that – ”
一方、” on ” と ” hiatus ” の間に、名詞や形容詞が
入る場合は、可算名詞の原則に戻り、冠詞がつく。
ご紹介した例文でも、そうなっている。
–
◆ 英語の冠詞は、日本語ネイティブにとって「 例外 」だらけで厄介。
初学者・初級者は、決して時間をかけすぎてはならないと考える。
この段階で、必要以上に深入りすると、「 英語嫌い 」になりがち。
やたらと目立つ「 例外 」の数々に戸惑い、頭が混乱してしまうから。
そのため、中級 以上の実力に達してから、舞い戻ってくるとよい。
–
◇ 中級に達したら、「 単語力 」 以上に 「 多読 」 を優先
▼ 中級学習者の勉強法を、 事細かにご案内 ▼
” no need ”、 「 自分の世界 」が広がる英語
–
–
そもそも 「 冠詞 」「 時制 」「 前置詞 」 などは、
初級レベルで 真に理解するには 無理がある。
–
英語の「 全体像 」がうっすら見え始めた中級学習者が、
ようやく把握できるようになってくる性質のもの。
–
◆ 「 前置詞3年、 冠詞8年 」は、先達の経験を踏まえた教え。
–
『 英語の冠詞がわかる本 改訂版 』正保 富三 (著)
研究社、 2016年刊
四六判、 180頁
–
「 何十年勉強しても、冠詞の用法を体得するのは至難である。 」
同感します。
【参照】 ”