Hiatus
2021/01/10
中断、 休止
特に重要でも頻出でもないが、
ニュースには普通に出てくる。
前もって知らなければ、読んでも聞いても
理解不能な単語 “hiatus”。
字面を見てもヒントは得られず、
どんな発音かすら見当がつかない。
つまり、推測の手がかりは少ない。
したがって、学習しておかない限り、
音声で聞き取るのは、ほぼ不可能。
すっと流れてしまい、単語の存在自体を
認識できない。
耳でとらえられないため、ニュースで
“hiatus” が使われたことさえ気づかない。
「今の単語って、どういう意味?」
と自覚しにくいのが、”hiatus”。
こんな曲者の割に、中身は比較的単純。
一度学べば、あとは楽ちん。
だから、ここで身につけてしまおう。
–
◆ まず、発音から。(クリックで発音)
haiéitəs ハィエイタス
【音節】 hi – a – tus (3音節)
音の強弱が顕著で、日本語から程遠い。
「3音節」で、真ん中の「第2音節」に強勢(アクセント)。
「音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位のこと。
→ 音節の差異が顕著な日英比較は、”integrity” 参照
–
–
ハィえいタス!
「えいっ!」と拳を突き上げ、反復練習するとよい。
これは、冗談ではない。
私自身、全身を用いて修得するのが常。
職場でも、構わずやっている。
★★★ 語学の基本は「真似」 ★★★
–
とりわけ「発音」は、恥ずかしがらずに、
幼児のように無邪気に真似る。
英語母語話者(ネイティブ)の口元を、さらりと
盗み見ながら、学び取っていく姿勢は、とても大事。
口周りこそ、舌・唇・歯・呼吸間の相互作用が奏でる、
「発音」の生産現場だから。
もし対面ならば、
さりげなく、ちらりちらり、そっと、うかがう感触。
これなら、失礼とまでは言えまい。
よもや、他人様の唇をこじ開けるわけにはいかない。
やや気色悪いが、私もこうして学んだ。
【参照】 “smooth out”
–
◆ たんと間違って、ちょっと利口になって、の繰り返し。
恥をかくのは、当たり前。
その方が、記憶に残り、成長できる。–
–
自分の口から 出して なんぼの世界
–
耳で聞くだけの「発音」修業は、もとより無謀。
口から排便するようなもの。
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お口で発音
◆ きゃっきゃっと童心に戻れる大人は、総じて発音の向上が早い。–
40年以上、各国の英語学習者と接してきて、言い切りたくなる。
知らない言葉を口にするのを楽しんでいる様子で、皆うれしそう。
でかい幼児 …
とにかく、五官と五感 の活用は相当効果があると感じる。
- おもしろさにわくわくするほど、新鮮な喜びにあふれた学び
- 世界が身近に迫り、出会いと可能性がぐっと広がる知的興奮
- この世を見る目が変わり、人生が彩り鮮やかになったりする
これが「語学」本来の姿なのである。
【参照】 “「Gmail」で作る単語帳 “、 “「自分の世界」が広がる英語 ”
–
我が国特有の致し方ない事情により、しんどい「勉強」
として根付いた有様の英語教育は、あまりに惜しすぎる。
【参照】 “conclusive”
–
–
◆ “the HIATUS” という日本のロックバンドがある。
–
2009年結成。
メディアにはほとんど出てこないが、
ライブやフェスで活躍中。
グループ名は「ザ ハイエイタス」と読む。
だが、このままでは英語ネイティブに通じない。
–
英語の発音は、haiéitəs 。
「3音節」で、hi – a – tus 。
第2音節に、強いアクセント。
何度も「えいっ!」と練習すれば、1日で身につく。
–
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ハィえいタス!
ハィえいタス!
ハィえいタス!
◆ “hiatus” は、可算名詞のみ。
–
語源は、ラテン語「すき間」(hiātus)。
語源の意味合いをそのまま引き継ぐのが、
次の基本的意味。
- すき間
- とぎれ
- 中断
- 休止
さらに、
- 脱文
- 脱字
その他、専門用語として、
- 文法 「 母音接続 」
母音が隣接している状態。 ヒアートゥス。
– - 解剖 「 裂孔 」
れっこう。 細胞組織にできた穴や裂け目。
どの意味も、語源「すき間」から、どうにか
イメージできる範囲内にある。
こう考えると、多義ではない。
少なくとも、日常的に多用される上記青字は、
語源「すき間」に近い。
◆ 多用されるとはいえ、冒頭の通り、重要でも頻出でもない。
ロングマン(LDOCE6)の重要度・頻出度の指標ではランク外。
- 重要度:9000語圏外
- 書き言葉の頻出度:3000語圏外
- 話し言葉の頻出度:3000語圏外
それでも取り上げる理由は、先述の特色のためである。
すなわち、名詞 “hiatus” は、
1. ニュースに通年出てくる
→ ただし、頻出に至らない
2. 読んでも聞いても、意味を推測しにくい
→ 学習しない限り、よく分からない
3. 独特な発音のため、単語認識が困難
→ 聞き取れず、完全にスルーしがち
多義ではない点は、3大学習英英辞典(EFL辞典)
の語釈からも明らか。
”hiatus”
- ロングマン(LDOCE6)
[countable usually singular]
1. formal
a break in an activity, or a time during
which something does not happen or exist.2. technical
a space where something is missing,
especially in a piece of writing.
– - オックスフォード(OALD9)
[singular] formal
1. a pause in activity when noting happens.
2. a space, especially in a piece of writing
or in a speech, where something is missing.
– - ケンブリッジ(CALD4)
[C usually singular] formal
a short pause in which nothing happens
or is said, or a space where something
is missing.
–
【発音】 haiéitəs
【音節】 hi – a – tus (3音節)
※ 下線は引用者
OALD9とCALD4の解説は酷似する。
下線部はキーワード。 上掲青字にも呼応する。
すべて “singular” とある。
「単数名詞」(singular noun)を示し、
単数形で使われるのが一般的な名詞。
さらに、3冊とも “formal” とある。
堅めで正式な言い回しを指す。
なんだかつかみどころのない印象。
そんな感じを抱くが、いかがであろうか。
◆ こういう単語の場合、意味をささっと学んだ後、
すぐに実例を見ていくと、記憶に残りやすい。
–
ひと休み–
–
- “I wanted to take a break.
Now, I’m on a writing hiatus.”
(ひと休みしたかったのです。
現在、書くことを休止中です。)
– - “After a two-month hiatus, he
resumed work as a writer.”
(2ヶ月間の休止後、彼は作家活動を再開した。)
– - “My favorite TV show is on hiatus.”
(好きなTV番組が途切れています。)
– - “I’m on a Facebook hiatus.”
(フェイスブックは休んでいるの。)
– - “I went on hiatus because I almost
burned out.”
(燃え尽きそうになったので、ひと休みしました。)
– - “There was a brief hiatus in the seminar.”
(そのセミナーには、短い中断期間がありました。)
– - “I will go on a social media hiatus.”
(SNSは休止しようと思います。)
◆ “on leave” や “on vacation“(休暇中)と同じく、
状態の前置詞 “on” を伴うのが最多パターン。
休止中 !
–
“on” の直後に続く場合は無冠詞となる点も同じ。
“on tour” や “on diet” にも共通する。
この用法の “hiatus”、”leave”、”vacation” は、
いずれも可算名詞なので冠詞がつくはずなのに、
冠詞なしの単数形が原則。
その理由を文法面から説明する確実な資料が、
なかなか見つからない。 困る。
■ 主な通説は2つ。
一言でいえば <習慣的表現>。
1) フレーズとして「2語ワンセット」で定着済み
→ “on a diet” でも可だが、無冠詞の方が一般的
2) フレーズ全体で「機能」として作用
→ “by mistake”、”by bus”、”by telephone”
など、手段・理由 の前置詞 ” by ” と似ている
本家の英語サイトでも、この程度の解説ばかり。
やはり、日本語を母語とする英語教師は必須 なのだ。
【参照】 “Please be aware that –”
一方、”on” と “hiatus” の間に、名詞や形容詞が
入る場合は、可算名詞の原則に戻り、冠詞がつく。
ご紹介した例文でも、そうなっている。
–
◆ 英語の冠詞は、日本語ネイティブにとって「例外」だらけで厄介。
初学者・初級者は、決して時間をかけすぎてはならないと考える。
この段階で、必要以上に深入りすると、「英語嫌い」になりがち。
やたらと目立つ「例外」の数々に戸惑い、頭が混乱してしまうから。
そのため、中級以上の実力に達してから、舞い戻ってくるとよい。
そもそも「冠詞」「時制」「前置詞」などは、
初級レベルで真に理解するには無理がある。
英語の「全体像」がうっすら見え始めた中級学習者が、
ようやく把握できるようになってくる性質のもの。
–
◆ 「 前置詞3年、冠詞8年 」は、先達の経験を踏まえた教え。
–
『 英語の冠詞がわかる本 改訂版 』
–
「 何十年勉強しても、冠詞の用法を体得するのは至難である。 」
同感します。
【参照】 “