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Ahead of time

      2024/06/26

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 5 minutes

予定より早い、事前に

“ahead of time” は、予定していた時間より早いこと。
副詞的用法である。

逆は、”behind time” (予定より遅れて )。

こちらは、前置詞 “of” を挟まない(後述)。

“ahead of/behind time”

earlier or later than the time when
something happens, should be done etc.
(ロングマン、LDOCE6)

earlier/later than was expected.
(オックスフォード、OALD9)

後述の通り、“behind time” を対義扱いするには微妙
な点もある。

だが、”ahead” と “behind” が対とされているのは
確かなので、まずはこの2単語を見ていこう。

◆  “ahead” は、副詞のみの単語。

【発音】   əhéd
【音節】   a-head  (2音節)

※  形容詞が加わる少数説もある

  • 接頭辞  “a” (~の方向に)
  • 名詞  “head” (頭部)

したがって、”ahead” は「前に」「先に」を示す。

ーーー前方道路工事中 (道路標識)

さらに「先んじている」 → 「優勢」。

位置時間の両方をカバーするので、適用範囲が広い。

“ahead” の特色は、<動的> な点。

位置的・時間的な「前に」「先に」でも、
進行中の対象> を中心に用いられる。

位置的な「前に」であれば、”in front of” が同義に近いが、
in front of” は<静止>した対象がほとんど。

◇  “ahead” は、絶えず動いている対象 が基本。

位置 時間 の両方OK。

【例】   時間 ・ 予定 ・ 未来 ・ 進行 ・ 競争

【時間】

  • “Japan is eight hours ahead of Germany.
    (日本はドイツより8時間進んでいる。)

    “Germany is eight hours behind Japan.”  
    (ドイツは日本より8時間遅れている。)
  • “The clock is ten minutes ahead.”
    (時計が10分進んでいる。)   ○ fast    × early

    “he clock is ten minutes behind.”
    (時計が10分遅れている。)   ○ slow    × late

【予定】

  • “We are ahead of schedule so far.”
    (今までのところ、予定より早く進んでいる。)

    “We are behind schedule so far.”  
    (今までのところ、予定より遅れている。)

【未来】

  • “Troubles may lie ahead.”
    (この先、トラブルが待ち構えているかも。)

  • “I need to plan ahead.”
    (将来の予定を立てなければ。)

【進行】

  • “Please go ahead.”
    (そのまま進めてください。お先にどうぞ。)
  • Go ahead and prove it.”
    (どうぞやってみせて。)  ※  嫌味的

【競争】

  • “She is ahead in the race for the mayor’s office.”
    (市長選で彼女が先にいる  →  優勢である。)

  • “He is behind the race with 1,000 votes.”  
    (彼の獲得数は1,000票で出遅れている  →  劣勢である。)


◆  一方、”behind” には、前置詞・副詞・名詞がある。

【発音】   biháind
【音節】   be-hind  (2音節)

※  形容詞が加わる少数説もある

語源は、古英語「後ろに」(behindan)。

接頭辞 “be”(~のそばに)+ 形容詞 “hind”(後ろの)。

だから “behind” は「後ろに」「後に」を示す。

さらに「遅れている」 → 「劣勢」。

位置時間の両方OKな点は、”ahead” と同様。

“ahead” が<動的>なのに対し、”behind” は<静的>。

そのため、先の “in front of“(静的) の対義になる。

成り立ちは “ahead” と大して変わらないように見えるが、
“behind” は品詞が多い。

  •  “behind” の本領は「前置詞」
  •  副詞のみの “ahead” と異なり、”behind” は
     前置詞としての役割が勝る

  •  副詞 “ahead” の対になる”behind” も、
    「副詞」ではなく、「前置詞」が多い

冒頭の緑字「behind time を対義扱いするには微妙」
の理由がこれである。

」つきの上記例文は、すべて前置詞の “behind”。

副詞ではない。

◇  “ahead of time” の対の “behind time” でも前置詞

副詞 “ahead” が
前置詞 “of” を要するのに対し、

“behind” では不要

“behind” 自体が前置詞 だから。

なんだか分かりにくい。

とにかく、副詞オンリーで動的な “ahead” と、
前置詞中心で静的な “behind” は、ぴったり対義
になるとは限らないことを押さえておけばよい。

◆  なお、名詞としての “behind” は、「お尻」以外に
めぼしい意味はない。

実質的に<お尻がすべて>の可算名詞
尻は「後ろ」に位置するから “behind”。

品のある婉曲表現である。

  • “He groped her behind on the bus.”
    (彼はバス内で彼女のお尻を触った。)
    ※  ニュース記事より

Behind closed door” より ↑


可算名詞なので、

お尻が2つ以上なら、”behinds

Don’t be silly.” より ↑

  • “How did ancient people wipe their behinds ? ”
    (古代人は、どのようにしてお尻を拭いていたのか。)

【参照】    「お尻」の英語表現

“ahead” と “behind” の文法説明はこれくらいにして、
表題 “ahead of time” に話を戻す。

◆  “ time ” には、名詞・形容詞・他動詞・自動詞 がある。

【発音】  táim  (1音節)

語源は、 古英語 「 時 」「 時間 」( tīma )。

圧倒的に使われるのは名詞 ( noun )。
不可算 ( countable ) と 可算 ( uncountable )を兼ねる。

基本的知識は、 以下の通り

◇  「 時 」は、 個数として数えられないので、
無冠詞の 「 不可算名詞 」 が基本

この場合でも、「 この時間 ・ あの時間 」 など
「 区別 」する場合は、 可算名詞。

何時何分、 何月何日など 「 出来事 」 の時間
を示す場合も、 「 可算名詞 」 が原則。

次の差異が分かるだろうか。


  • Do you have time ?

    ( 今、お時間ありますか 


  • Do you have the time ?

    ( 今、何時でしょうか 


    現在の時刻 ( current time ) を他者に尋ねる英語表現として、

    What time is it ?   と学校では学んだりするが、

    これは実は相当ぶしつけな尋ね方。

    今、何時 ? 」 同然の響き。

    露骨でむき出しゆえ、 いきなり聞かれた側は不快かも。

    赤の他人やさほど親しくない人に時間を聞くには、 先述の

    ” Do you have the time ? ” ( 今、何時でしょうか


名詞  “ time ” については、 いかなる辞書を調べても、

不可算が優先  されている( uncountable  noun )。

よって、 「 ” time ” の基本は不可算名詞 」 と覚える。

表題も、不可算名詞 の ” time “。

◆  以上より、”ahead of time” の直訳は「時間の前に」。

  • 副詞  “ahead“(前に、先に)
  • 前置詞  “of“(~の)
  • 不可算名詞  “time“(時間)

この用法での “time” は、双方合意の時間を指すのが一般的。
すなわち「定刻」。

とすれば「time = 定刻」で、「ahead of time = 定刻前に」。

◇  「定刻前に」 の主な意味

(1) 予定より早い
(2) 事前に

(1)の逆は「予定より遅れて」で、先述の “behind time“。

(2)の逆は「事後に」で、”after the fact” が定訳扱いされている。

実際は、”after – took place” など動詞を用いて事後を表す
ことが多く、”after the fact” は普段あまり見聞きしない

“ahead of time” を見れば、直訳に近い(1)を想起する
のが自然。(2)は(1)を展開した考え方。

すなわち、

予定より早い 」 → 「 実行前 」 → 「 事前に 」。

どちらも「定刻前」なので、区別にそう神経質になる
必要はないだろう。

“time” の内容を把握している当事者であれば、
文脈上難なく分かるはず。

さらに、(1)の大半に具体的な数値が出てくる。

当事者でなくても、判別はそう難しくないのは、
以下の例文からも明らか。


(1)予定より早い


“The renovation work was finished three weeks
ahead of time.”
(改修工事は予定より3週間早く終わった。)

“I was there 10 minutes ahead of time.”
(10分前にはそこにいました。)

“I arrived at Tokyo Station Airport well ahead of time.”
(東京駅にはかなり前に着きました。)
(東京駅には余裕を持って着きました。)

※  “well” は副詞。   “considerably” とほぼ同義

“He left the office about half an hour ahead of time.”
(彼は予定より約30分早くオフィスを出ました。)

“She prepared the drinks a day ahead of time.”
(彼女は前日に飲み物を用意しました。)

(2)事前に

I’ll see her ahead of time to decide what to do.”
(何をするか決めるため、彼女に事前に会うつもりです。)

“We need to find out the number of files ahead of time .”
(事前にファイル数を調べなければならない。)

I have no idea ahead of time whether the file
contains a virus.

(このファイルがウィルス入りかどうかは、
私には事前に分かりません。)

“They talked things out ahead of time.
(彼らは事前に徹底的に話し合いました。)

 

<「事前に」類語3選 >    ※  頻出順 (私見)

  •  in advance  (前置詞+名詞)
  •  beforehand  (形容詞)
  •  prior  (形容詞)

【関連表現】      ※  前置詞 “behind” つながり

 

 

 

 

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