Acting
2024/08/06
一時的な代行、 代理
組織に属しておられる方であれば、出張などで
一時不在の管理職らのために、代理・代行が指名される
状況をご存知であろう。
通常業務が滞らないよう、 部下などに一時的に兼任させる。
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【参照】 ” On duty / Off duty ”
→ collateral duties ( 付随的任務 )
→ temporary duties ( 暫定職務 )( 一時的な職務 )
–
時には、 対外的な承認・決裁まで代行するので、 必ずしも
形式的な臨時職というわけでない。
責務の度合いは、 代行する職務内容に左右されるが、
兼任者の負担が増すのは確実。
外資系では 「 彼女は、今、アクティング 」 などと、
代行中の状態 ( 立ち位置・立場 ) を表現したりする。
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■ 兼務
■ 兼任
■ 代行
■ 代理
–
つまり、 代わりにやっている状態が ” acting “。
【発音】 ǽktiŋ
【音節】 act-ing (2音節)
「 状態 」 なので、 形容詞( adjective )。
形容詞ゆえ、 直接名詞を飾るのでなければ、
「 be動詞 」 に続くのが基本パターンになる。
※ 「 be動詞 」 = be、am、was、been、will be、is、were、are
–
–
” acting “doing the work of another person for a short time.
SYN: temporary
( オックスフォード、 OALD9 )※ SYN = synonym = 同義語、下線は引用者
【発音】 ǽktiŋ
【音節】 act-ing (2音節)
–
形容詞 ” acting ” は、 代行する職位にかぶさる形が基本。
さらに、後付けカッコの表記も、頻繁に用いられる。
日本の一般紙でも、( 代行 )という後付けカッコを見かける。
その原文を確認すると、 ” acting ” が大半である。–
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- acting captain
- acting chairperson
- acting manager
- acting head
- acting chief
- acting director
- acting president
- acting mayor ( 市長代理 )
- acting leader
- acting successor ( 後任者代行 )–
- Acting Secretary of the Treasury ( 財務長官代行 )
- Acting Secretary of Defense ( 国防長官代行 )–
→ 「 国防長官代行 」の実物署名を、 本稿末尾に掲載
–
< 後付けカッコ例 >
- chief (acting)
- manager (acting)
- Secretary of the Treasury (Acting)
- Secretary of the Navy (Acting)
→ 主要メディアは「 海軍長官代行 」と和訳
< 後付けカッコなし例 >
- Secretary of the Navy, Acting
→ 主要メディアは「 海軍長官代行 」と和訳
–
以上が代表例。
短期間だけ代わる際、メール末尾の署名欄には、こう書いたりする。
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–
Taro Yama (Mr.)
Customer Service Manager (Acting)
through June 30, 2021
–
2021年6月30日まで、 期間限定の代行。
カスタマーサービスマネージャーを兼務することに
なった Mr. Yama が、 自分のメールに記載する。
「 カスタマーサービスマネージャー代行 」の立場で
出すメールに用いる署名であり、 本職用のメールでは、
自分本来の署名にして使い分ける。
無用の混乱を予防するためで、 社内外を問わず使える。
(Mr.) は性別を示し、 女性なら (Ms.) 。
日本名から性別を見分けられない相手を想定して、
(Mr.) または (Ms.) と書くのだが、 必須ではないだろう。
後釜が予定通りに着任できない場合、
こっそり日付を延長することもある。
–
–
◆ 職名の前または後に、” acting ” を挿入するだけだから、
そう難しくない。
それより、分かりにくいのは、役職と冠詞の関係。
–
< 冠詞の原則 >
■ 官職・身分を表す語が 「 補語 」 となる時は、 無冠詞
–
–
「 補語 」 ( complement )英文法では主語や目的語の性質・状態を表す
名詞・形容詞をいう。( 広辞苑 第七版 )
–
補語は、 主語・目的語に対し、述語の働きをして、
意味を補う 名詞 または 形容詞。
–
【発音】
名詞 kɑ́mpləmənt
動詞 kɑ́mpləmènt
【音節】
名詞 com-ple-ment (3音節)
動詞 com-ple-ment (3音節)
◇ 英語の5文型の 「 C」 が、 ” complement “。
- 第2文型 SVC ( 主語 subject + 述語動詞 verb + 補語 )
- 第5文型 SVOC ( 主語 + 述語動詞 + 目的語 object + 補語 )
「 基本5文型 」 とは、 英文の分類を指すのではなく、
「 動詞 」 の種類を区別するための文法用語。
–
◆ 上掲例にある ” acting ” 直後の単語
( president、chairperson など )が
補語になる場合、冠詞(a / an、the)は不要。
それが原則。
通常の「補語」例は下線部。
- Mary is honest. ( 形容詞 )
- He is a teacher. ( 名詞 )
- She made him mad. ( 形容詞 )
「 官職・身分を表す語 」が補語の例は、次の通り。
- He was elected leader.
- She was appointed chairperson.
- His father is president of this firm.
- We selected her captain.
- I was removed as head of the group.
下線が補語で、先の原則に従い無冠詞となる。
< 注意点 >
その職にある人が一人に限られる場合、
または世襲か選挙などで選ばれる地位が条件となる。
私たち日本人学習者には分かりにくい、 役職の冠詞。
そこで、 下記の視点で考えてみるとよい。
–
◇ 「 官職・身分を表す語 」 が補語の場合、 その人を、
個々の 「 人間 」 ではなく、
単なる 「 役割 」 として見ている。
–
「 役割 」は、 抽象的 な概念
↓
抽象的 = カタチ( 形 )がない
↓
–
カタチがない から、 冠詞不要
★ 「 人間扱い 」してない ★
■ 英語の 「 無冠詞 」 の根本となる考え方
物品・人間などの カタチ は無視
物・人そのものはどうでもよく、 大事なのは「 役割 」
~ 「 外見よりは中身 」 に似通う考え方 ~
–
↓
「 役割 」 「 機能 」 「 概念 」 「 用途 」
抽象的 な側面を見ている
–
↓
無冠詞
【参照】 ” in place “、 ” take action“、 ” paperwork“
◆ 最初は違和感しかないものの、 英語に親しみ続けると、 徐々に
「 無冠詞 」 の理屈が感覚的につかめるようになってくる。
「 抽象・概念に冠詞は不似合い 」 と自然に感じようになる。
–
これらに冠詞がつくと、「 なんか変 」 と逆に違和感を覚える。
中級学習者 のとば口にさしかかると、 大抵この域に達する。
悩んでいた頃の自分が不思議に思えるレベルに到達できる。
例外的な用法もあるとはいえ、 以上の基本は難しくはない。
【参照】 応用 : 冠詞は使い手の気持ちで変わる時も珍しくない
–
◆ 上述の例では、
- He was elected leader.
→ 選ばれた「 リーダー 」の役割
– - She was appointed chairperson.
→ 選ばれた・唯一の「 会長 」の役割
– - His father is president of this firm.
→ 唯一の「 社長 」の役割
– - We selected her captain.
→ 選ばれた・唯一の「 キャプテン 」の役割
下線部は、 単なる「 役割 」で、「 機能 」に過ぎない。
–
「 役割 」 「 機能 」は、 抽象的 な概念
–
カタチがない から、 冠詞不要
★ 「 人間扱い 」してない ★
–
なお、実際の使用例を多数調べると、
ここに記した < 冠詞の原則 > が厳密に適用
されていないケースも少なくない模様。
◆ 職名・職位・肩書( job titles )は、組織により大差がある。
外国企業の場合、一般的な日本企業の呼び名に該当するものが
見当たらないことが多々ある。
それらしきものがあっても、地位の位置づけが異なること
が少なくない。
好例は、” vice president “。
「 副大統領 」または「 副社長 」が定訳。
日本のほとんどの企業では、副社長は役員職である。
ところが、一部の米国企業では、普通の管理職 を指す。
そのため、” vice presidents ” が社内にごろごろいたりする。
当然のことながら、 職級は格別高くない。
” vice president ” を寄こす旨の通知を受け、かしこまって
厚遇したところ、 実は課長相当だった。
こんな肩透かしを食らった経験が、 私にも何度かある。
外国企業の ” job titles ” は、和訳する者にとって、
なかなかの鬼門なのである。
職級の誤解・誤認は、 社内外問わず問題になる。
実態より、高すぎても低すぎても不都合が生じがち。
相手のポジションを勘案して対応を決めるのが、
ビジネス社会の慣習だからである。
詳細を組織に確認するのがベストだが、
それができない時は、無理に漢字に置き換えずに、
カタカナで表すこともしばしば。
外資系の企業に、 カタカナ職が多い一因は、
こうした 誤解を予防するため。
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【参照】 カタカナで日本語の仲間入りさせて、リスク回避
–
組織に与えうる潜在リスクを考慮の上、
「 誤解されやすい 」和訳よりも、「 理解されにくい 」原文を
採用した結果であろう。
◆ ” acting ” は、不在時の 一時的な任務。
上述OALD9の下線部、” a short time “、” temporary ”
が明記する。
常置ポジションである、
「 副〇〇 」( vice – )「 〇〇補佐 」( deputy – )
とは扱いが異なるのが一般的。
” acting ” の意味合いは、同じく形容詞の
「暫定」( interim )に似ている。
- interim CEO
- interim executive director
- interim president
- interim prime minister
米アップル社の故スティーブ・ジョブズは、
1997年から2000年まで、「 暫定CEO 」を勤めた。
–
【参考】 ※ 外部サイト
- 1997年 ” interim CEO ” 就任記事
Jobs named interim Apple CEO
1997年9月16日付
– - 2000年 ” full-time CEO ” 就任動画
Macworld 2000-Steve Jobs Becomes iCEO
動画全長: 3分17秒
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” interim “intended to last for only a short time until
somebody / something more permanent
is found.( オックスフォード、OALD9 )
【発音】 íntərim
【音節】 in-ter-im (3音節)
ざんてい【暫定】
本式に決定せず、しばらくそれと定めること。
臨時の措置。( 広辞苑 第七版 )
※ 下線は引用者
- “I will serve as your leader in the interim until
a permanent replacement is identified.”
(正規の後任者が決定するまで、暫定的にリーダーを
務めさせていただきます。)
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–
◆ 加えて、名詞 “ relief ” も使われる。
「 交代要員 」の意で、野球の救援投手「リリーフ」がこれ。
【発音】 rilíːf
【音節】 re-lief (2音節)
一時的な「 代理 」以外にも、正式決定した「 後継者 」も意味する。
文面からはいずれとも解釈できるが、事情通なら判別可能。
- “My relief will be Mr. X.”
(私の代理は、Xさんとなります。)
(私の後継者は、Xさんとなります。)
動詞では、 “ relieve “( 交代する )。
自動詞と他動詞があるが、 他動詞中心。
自動詞の載っていない中型辞書もある。
【発音】 rilíːv
【音節】 re-lieve (2音節)
【活用形】 relieves – relieved – relieved – relieving
- “X relieved Y as Captain.”
(XはYとキャプテンを交代した。)
(XはYの次のキャプテンになった。)
– - “X relieved Y.”
(XはYと交代した。)
(XはYの後任となった。)
– - “She was relieved due to a loss of confidence in her ability
to perform her duties. ”
(職務遂行能力に対する信用を失い、彼女は解任された。)
–
–
補欠・補助的な役割を担う代替要員や代理を ” alternate “、
立場が上位で主要な担当者を ” primary ” として区分する。
–
【発音】 práimèri
【音節】 pri-ma-ry (3音節)
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※ 2024年8月6日 アクセス
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–
” alternative “ より
–
–
◆ 繰り返すと、 職名と職級は組織次第。
実に多彩を極める呼び名。
本稿の内容が該当しない組織も普通に存在する。
あくまでも、一般論をご紹介した。
しばし President 代行 やります
- “He became acting president while
his father was in the hospital.”
(父親の入院中、彼が社長代理となった。)
– - “Iran’s first vice president will serve as acting president.”
(イランの第1副大統領が大統領代行を務めることになる。)
– - “He has been appointed acting division
head until a replacement can be found.”
(後任が見つかるまで、彼がディビジョンヘッド
代行となった。)
–
- “They accomplished everything under acting captain
T. Johnson.”
(キャプテン代理のT. ジョンソンの指揮下で、
彼らはすべてを成し遂げた。)
–
- “She stepped in as acting chief.”
(彼女がチーフ代行となった。)
–
- “I will be the acting director until then.”
(それまで私がディレクター代理となります。)
– - “Her acting successor is her son.”
(彼女の息子が後任代理である。)
–
–
【関連表現】
- ” fill in for ”
https://mickeyweb.info/archives/6085
( ~の代役を務める )
– - ” on behalf of ”
https://mickeyweb.info/archives/21017
( ~ の代理として、 ~ を代表して )
– - ” step down ”
https://mickeyweb.info/archives/21087
( 辞任する )
– - ” sit in for – ”
( ~ の代役を務める )
【参考】 ※ 外部サイト
リチャード・スペンサー国防長官代行の署名 ( 一般公開済み )
2019年7月15日付 米軍と国防総省の職員に向けた就任文書
件名 : 国防長官代行に就任
「 本日より( effective immediately )、国防長官代行に就任いたしました。 」
Letter from Acting Secretary of Defense
Richard V. Spencer to Pentagon署名の直下 ” Acting ” に着目