プロ翻訳者の単語帳

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In private

      2018/12/02

2人だけで、2人きりで、非公開で

  • Can I talk to you in private ?
  • Can I speak to you in private ?
  • Can we talk in private ?
  • Can we speak in private ?

こう同僚に声をかけたり、かけられたり。

目上にお伺いを立てる際は、より丁寧かつ堅い言い振りで、

  • May I talk to you in private
  • May I speak to you in private ?
  • May we talk in private ?
  • May we speak in private ?

どれも便利な言い回しである。
決まり文句に近いので、丸ごと覚えておきたい。

◆ 意味は分かるだろうか。
文末の “in private” がポイント。
中級学習者にとっては、既習の基本フレーズのはず。

それでも取り上げたいのは、日本人学習者に誤解されがち
だから。再確認のきっかけになればと考えた。

【誤】プライベートな時間に、勤務後に
【正】2人だけで

in” は、時を表す前置詞「~のうちに」「~に」。

  • in 2018(2018年に)
  • in July(7月に)
  • in summer / in the summer(夏に)
  • in the morning(午前に)
  • in my lifetime(私の一生の間に)

“in private” →「private に」→「プライベートに」
この流れが誤解の根源。
カタカナ「プライベート」そのままの解釈である。

プライベート【private】
個人的。私的。
(広辞苑 第七版)

大正文学にも出てくる「プライベート」の用法。
これを引きずると「個人的な時間に」などと考えてしまう。

もっとも、これは英語 “private” の基本的意味でもある。
そのため、明らかなミスとまでは言いにくい。
この微妙な具合が、本稿執筆の動機につながった。

◆ “private” には、形容詞と名詞がある。
語源は、ラテン語「私的な」(prīvātus)。
カタカナ「プライベート」は語源に忠実なのである。

日常用途は形容詞ばかりで、基本的意味は、
– 形容詞「個人的な」「私的の」「私用の」「秘密の」
「非公開の」「在野の」「民間の」「独りの」
– 名詞「兵卒」「私学」「陰部(複数形 “privates”)

これらの意味は、法律用法とも重なる。
有力な英米法辞典『ブラックス法律辞典』にはこうある。

1. 私的の、民間の 2. 非公開企業の 3. 秘密の
※ 2は、主にイギリスで使う


Black’s Law Dictionary, 10th Edition”,  page 1389.

形容詞 “private” は、英単語全体から見ても、
最頻出かつ最重要。以下3項目にて、最高ランク。

– 重要:最上位 <トップ3000語以内>
– 書き言葉頻出:最上位 <トップ1000語以内>
– 話し言葉頻出最上位 <トップ1000語以内>
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)

↑ 受け手(右)が、”in private” を誤解している様子。
(話者の意図=仕事の相談上「2人きり」で話したい)

3大学習英英辞典(EFL辞典)の解説は鮮やか。
あいまいさがなく、誤解の余地を与えない。

in private” =
■ without other people being present.
(LDOCE6、ロングマン)

■ with nobody else present.
(OALD9、オックスフォード)

■ if you do something in private,
you do it without other people 
present.
(CALD4、ケンブリッジ)

下線 “present” は形容詞。
居合わせる」「同席している」の意。

◆ この present” も、日本人学習者が間違いやすい語。
「プライベート」同様、カタカナが誤解の根源と考えられる。
よい機会なので触れておきたい。

“present” は3語に分かれる。
それぞれ別物として考えた方がよい。

形容詞と名詞は、発音もアクセントも同じだが、
動詞は、発音もアクセントも異なる
「プリゼント↑」と聞こえる。「プレ」でなく「プリ」。

上掲英英3冊の “present” は「1」。
カタカナ「プレゼント」は「3」。

  1. “present”
    ・ 形容詞「居合わせる」「同席している」「現在の」
    ・ 名詞「現在」「今」
    【発音】prézntプレゼント、前にアクセント)
  2. “present”
    ・ 他動詞「贈呈する」「提供する」「紹介する」
    「放送する」「出頭する」「見せる」
    ・ 自動詞「現れる」
    【発音】prizént(プリゼント、後ろにアクセント)
  3. “present”
    ・ 名詞「贈り物」「プレゼント」
    【発音】préznt(1と同じ)

◆ 冒頭の会話での “in private” は「2人だけで
または「2人きりで」と和訳されるのが普通。

しかし、先の英英3冊の語釈が明示するのは、
“without other people” “with nobody else”
であり、そこに「他の人がいない」こと。

したがって、「2人だけ」に限定されない。
例えば、話者がその場の「3人」に同じ発言をすれば、
本人を含む「4人だけ」になる。

発言時の状況を常識的に想像すると、大抵は
「2人だけ」または「3人だけ」。
だから、”in private” の定訳扱いされてしまう
わけだが、そうでないことは上述の語釈で明らか。

◆ この視点は、形容詞 “alone“(~だけで)
にも共通する。以下は “in private” 例と同義。
同じく「2人だけで」に限らない。

  • “Can we talk alone ? “
  • “Can we speak alone ? “
  • “May we talk alone ? “
  • “May we speak alone ? “

◆ 本稿の発言は、どれも日常的に耳にするレベル。
常用されるということだが、使用上、他の人への
気遣いも大切である。

ご自分が居合わせた者と仮定すれば、分かりやすい。

「2人だけで」などと眼前で会話されると、
のけ者扱いされた感じがしないだろうか。
決して感じのよいものではない。

「2人だけで何を話すの?」
「私の陰口かな …」
「なぜ私を外すの?」
疑心暗鬼になっても、不思議でない。

人を脇に連れ出すのも、簡単ではなかったりする。
これは言語の問題ではない。

コミュニケーション能力や他者への思いやりを含む
ソフトスキルが問われる場面である。

米国の相談サイトでも、失礼か否かが議論されている。
Is it polite to say “Can I talk to you in private”
when you have company ?
※ “have company” = 誰かと一緒

【反義語】
in public
(人前で、公然と)


【関連表現】
“I want to sit down with you.”
https://mickeyweb.info/archives/15627
(あなたと話し合いたい。)

“Could I have a word with you ? ”
(2人きりでお話させていただけますか。)

“Could I talk to you for a minute ? ”
(ちょっといいですか?)

in person
じかに(生で)、直接に

 

 

 

 

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