False alarm
2021/08/24
誤報、 いたずら、 誤作動
- 形容詞 ” false “(間違った)
- 可算名詞 ” alarm “(警報)
「間違った警報」が直訳。
「誤報」と換言できる。
日本語の「誤報」は、文字通りの意味しかない。
「 誤報 」
まちがったしらせ。
(広辞苑 第七版)
–
間違えて知らせること。
また、間違った知らせ。
(大辞林 第三版)
–
まちがって知らせること。
事実と違うことを知らせること。
また、そのしらせや報道。
(精選版 日本国語大辞典)
◆ ところが、英語の “false alarm” は、
- 虚偽の情報
- いたずら
- 誤作動
による誤報も含む。
ニュース用法としては「誤報」と同等、
またはそれ以上に出てくる。
「誤報」だけなら、わざわざ取り上げないが、
日本語にない内容を含むため、ご紹介したい。
–
◆ “false” には、形容詞と副詞がある。
【発音】 fɔ́ːls (1音節)
語源は、ラテン語「偽の」(falsus)。
自他動詞・名詞の “fail”(失敗する)と同源
であり、語源からしてネガティブ。
基本的意味は、この語源の意味合いを貫くため、
理解は難しくない。
- 形容詞
「間違った」「事実に反する」
「不誠実な」「虚偽の」「本物でない」
– - 副詞
「間違って」「不誠実に」
形容詞中心で、”a false alarm” でも形容詞。
副詞用法は少なめ。
いずれもネガティブ満載な感じ。
” a false report ” でも形容詞。
ニュースで目立つ ” false reports ” は、
警察・消防に対する「 虚偽通報 」。
–
◆ ” true ” と対になる使用場面は、言うまでもなく基礎。
【発音】 trúː (1音節)
ー
答えは、 False( 誤 )
–
◆ “alarm” には、名詞と他動詞がある。
【発音】 əlɑ́rm
【音節】 a-larm (2音節)
自動詞はない。
語源は、イタリア語「武器を取れ」(all’arme)との命令。
基本的イメージは「アラーム」通り。
「アラーム」
1. 警報。警報装置。
2. 目覚し時計。また、その音。
(広辞苑 第七版)
カタカナ「アラーム」は名詞のみだが、
“alarm” には他動詞もある。
名詞は不可算と可算を兼ねる。
上記「アラーム」の語釈は、可算名詞。
- 名詞
「警報」「警告」 → 可算
「驚き」「恐怖」 → 不可算
– - 他動詞
「驚かす」「おびえさせる」
「警報を出す」「警報器を取り付ける」
一方、「驚き」「恐怖」の感情 は、抽象名詞なので、不可算名詞。
【参照】 ※ 外部サイト
抽象名詞とは? ポイントは「概念や考え方をあらわす語」
https://toiguru.jp/abstract-noun
–
「警報」が鳴り響くことで、急速に生じる類の情動と考えてよい。
誤報なの ?
“false alarm” では、可算名詞の「警報」。
したがって、不定冠詞の “a” がつく。
–
◆ 冒頭に述べたように、「間違った警報」
すなわち「誤報」が基本的な意味である。
英英辞書でも「誤報」中心の解説になっている。
まず、3大学習英英辞典(EFL辞典)からチェック。
“false alarm”
a situation in which people wrongly think
that something bad is going to happen.
(ロングマン、LDOCE6)
–
an occasion when people wrongly believe
that something dangerous or unpleasant
is happening or will happen.
(ケンブリッジ、CALD4)
※ 下線は引用者
この2点の語釈は、かなり似通っている。
要約すると「悪いことが起きると間違って
思ってしまうような状況」。
一方、OALD9は趣きが少し異なる。
a warning about a danger that does not happen;
a belief that something bad is going to happen,
when it is not.
(オックスフォード、OALD9)
後段は先の2冊と同様。
前段は「起こらないことへの警告」で、
ずばり「誤報」を指している。
3大EFL辞典の語釈は、前掲の国語辞典3冊の
「誤報」の域を出ない。やはり、これが基本。
以上の解釈のどれをとっても、意図は問わない。
つまり、故意なのか不注意なのか不問である。
とにかく、あるべきものとは違う知らせ。
それが「 誤報 」。
“ misinformation ” も「 誤報 」「 誤情報 」だが、こちらは
「 警告 」を要素としておらず、もっと中立的な印象。
【発音】 mìsinfəméiʃən
【音節】 mis-in-for-ma-tion (5音節)
【参考】 miscommunication
【発音】 mìskə̀mjuːnikéiʃən
【音節】 mis-com-mu-ni-ca-tion (6音節)
–
加えて、
” disinformation ” は、「 虚報 」「 ガセネタ 」。
意図的な ” fake ” と ” hoax ” に ずっと近い。
【発音】 dìsinfəméiʃən
【音節】 dis-in-for-ma-tion (5音節)
【参照】 ※ 外部サイト
- 新型コロナパンデミック下で誤情報を拡散しないために
https://www.enago.jp/academy/misinformation-about-pandemic/
2020年4月28日付
– - How a Crisis Researcher Makes Sense of Covid-19 Misinformation
https://onezero.medium.com/reflecting-on-the-covid-19-infodemic-as-a-crisis-informatics-researcher-ce0656fa4d0a
2020年3月9日付
–
◆ “false” は、作為的な情報操作が伴う報道や明らか
に事実と異なる情報を含む知らせで、よく起用される。
例えば、「デマ」。
「デマ」
(デマゴギーの略)
1. 事実と反する煽動的な宣伝。悪宣伝。
2. 根拠のない噂話。流言飛語。
(広辞苑 第七版)
既記の通り、通常、日本語の「誤報」には含まれない
と考えられる内容である。
–
◆ 論より証拠で、実例を挙げる。
- “The bomb threat proved to be a false alarm.”
(その爆破予告は何事もなく終わった。)
日本のニュースでは、
- 不審物は発見されなかった
などと結論されることが多い。
一方、英語では、
- nothing was found ( 何も見つからなかった )
- no evidence of – ( ~ の証拠なし )
- found to be unsubstantiated ( 根拠がなかった )
など。
- “That distress call proved to be a false alarm.”
(その遭難信号はいたずらだった。)
– - “False alarm puts high school on lockdown”
(いたずら通報により高校封鎖) ––– ※ 見出し
– - “The threat to shoot up school turn out to be a false alarm.”
(学校乱射の予告は虚偽と判明した。)
日本語では、故意の犯行を「誤報」に基本的には含まない
以上、”false alarm” で済む英語と違い、表現しにくい。
ニュースでも「いたずら」「虚偽」などとある。
–
◆ 以下は「誤報」でよい。
–
勘違いした人が、警報発動・通報してしまった例。
- “Missile false alarm resulted in panic”
(ミサイル発射の誤報でパニック)–– –※ 見出し
– - “Police received false alarm about gunman”
(警察に武装犯の誤通報)–– –※ 見出し
– - “Reports of school shooting was
determined to be a false alarm.”
(学校乱射事件は誤報と確定された。)
機器自体の誤作動も、”false alarm”。
- “Because of so many false fire alarms, people
started ignoring the fire alarms.”
(誤作動があまりに多かったため、人々はその火災報知機
を無視し始めた。)
趣旨は様々であろうが、愉快犯的な “ prank call ”、
または “ fake news ” の ” hoax “(でたらめ、偽物)
に重なる要素も少なくない。
情報が 一気に拡散する インターネット時代の流れ
から考慮すれば、受け手側が自衛する方法を
身につける必要性が高まっている。
–
【参考】 情報源が分散できることが英語学習の利点
–
< 注意喚起の事前通知 >
- “Plan accordingly”
https://mickeyweb.info/archives/2372
(それを考慮して、行動してください。)
– - “reminder”
https://mickeyweb.info/archives/3312
(思い出させるための表現)
– - “Action required”
https://mickeyweb.info/archives/3719
(要行動、対応必須)
– - “raise awareness”
https://mickeyweb.info/archives/8831
(意識を高める)
– - “heads-up”
https://mickeyweb.info/archives/9871
(注意喚起の通知)
– - “send a clear signal”
https://mickeyweb.info/archives/12260
(明確なメッセージを送る、警告を送る)
– - “distress signal”
https://mickeyweb.info/archives/19081
(遭難信号)
– - “wake-up call”
https://mickeyweb.info/archives/6572
(警鐘)