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Break the silence

      2021/03/11

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沈黙を破る

“break the silence” は、これまで
ずっと黙ってきた人が、話し始めること。

「沈黙を破る」は、日本語でも多用される
ので、感覚的に理解しやすいだろう。

耳目を驚かすインパクトがあるため、
特に芸能ニュースと相性がよい。

◇  芸能系の見出し(headlines)で多用される表現:

◇  「見出し」英語の解説は、ここが秀逸  ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語


◆  “break the silence” は堅めのニュースでも
使われるが、使用頻度は高くない。

人々の興味をむやみに煽り立てる記事や表現は、
ニュースの性質にそぐわないからであろう。

反意語は、”keep the silence”(沈黙を守る)。

 

 

日本語の「沈黙を破る」は、
<休止後の再活動>をも意味する。

しかし、”break the silence” は、
この意味合いを含まない。

他方で、音を出すことで静けさを打ち破る
文字通りの内容は、日英共通した用法である。

  • “The sound of the engine broke the silence.”
    (エンジンの音が沈黙を破った。)

◆  “break” には、他動詞・自動詞・名詞がある。

【発音】  bréik
【音節】  break  (1音節)

【活用形】  break – brokebroken – breaking

語源は、古英語「壊す」(brecan)。

基本的で、幅広い分野をカバーする多義の単語。
試験頻出の句動詞や成句も数多い。

  •  break down (故障する、分類する)
  •  break even (収支とんとん)
  •  break in (侵入する)
  •  break off (外れる)
  •  break out (勃発する)
  •  break through (切り抜ける)
  •  break up (ばらばらになる)
  •  break one’s heart (悲嘆させる)
  •  break one’s neck (努力する)
  •  break the ice (突破口を開く)

多義とはいえ、大半は語源のイメージを帯びる。

またカタカナ「ブレーク」も根付いている。

分かりにくくはないだろう。

基本的意味は、
–  他動詞「壊す」「中断する」「破る」「知らせる」
–  自動詞「壊れる」「中断する」「発生する」
–  名詞「破壊」「割れ目」「脱走」「中断」「休憩」

ここでは、他動詞「破る」。

◆  “silence” には、名詞・他動詞・自動詞・間投詞がある。

【発音】  sáiləns
【音節】  si-lence (2音節)

語源は、ラテン語「静かである」(silere)。

語源の意味が全品詞を貫くため、理解しやすい。

–  名詞 「静寂」「沈黙」「忘却」
–  他動詞 「黙らせる」「鎮圧する」
–  自動詞 「沈黙する」「静かになる」
–  間投詞 「静かに!」「静粛に!」

※  「間投詞」( interjection )とは、
感動や応答を表す語で、単独で文となりうる呼掛け言葉。

【例】
“Oh ! “、”Alas ! “、”Oops ! “、”Whoa ! “、”Gross ! “、”Check ! ”
Welcome back ! “、”Well done ! “、”Barf ! “、”Snap ! ”

 

本稿 “break the silence” では、名詞「沈黙」。

原則として、不可算名詞かつ抽象名詞。

だが、不定冠詞 “a” がついたり、複数形になったり、
文法的な例外もある。

  • “a short silence”
    (短い沈黙)
  • “There is a silence within each of us.”
    (我々の中にそれぞれ沈黙がある。)

■  「沈黙を破る」の主な表現パターンは2つ

  • break the silence
  • break one’s silence


◆  “one’s” には、通常は人称代名詞
所有格を入れる。

すなわち、次のいずれか。

  •  my  私の
  •  your  あなたの
  •  his  彼の
  •  her  彼女の
  •  their  彼らの
  •  our  我々の

one’s” は、所有格の代表形として、
辞書などで起用される。

具体的には、不定代名詞one” の所有格が “one’s”。
上記の所有格を代表する。

いわば、所有格のワイルドカードとして使われる。

この2つの用法と和訳には、大差はない。
日常的には、ほぼ同じように使われている。

ただ、特定の人間が関わらない場合は、
必然的に “the” となる。

逆の「沈黙を守る」は、他動詞 “keep” で置き換えて、
keep the silence” と “keep one’s silence“。

または、自動詞 “keep” で “keep silent“(無冠詞)。


◆  「沈黙」は、ニュースになりにくい。

新たな情報が出てこないから、当然だろう。

一方「沈黙を破る」際は、大いに注目され、
時に特ダネ記事になったりする。

扇動的な意味合いは特に含まないはずの
“break the silence” が、芸能見出しの煽り文言
によく使われることは、既述の通りである。

◆  芸能見出しは、とりわけ 集客・販促 の役割を求められる。

  • “X Breaks the Silence about His Divorce”
    (Xが離婚について沈黙を破る)
  • “Y Breaks Her Silence on Accident”
    (Yが事故について沈黙を破る)
  • “X Breaks His Silence on the Arrest”
    (Xが逮捕について沈黙を破る)
  • “Y Breaks Her Silence about the Controversy”
    (Yが論争について沈黙を破る)
  • “X’s Husband Breaks His Silence After Her Death”
    (Xの死後、夫が沈黙を破る)
  • “Z Breaks His Silence on His Daughter’s Death”
    (Zが娘の死について沈黙を破る)
  • “The former President finally broke his silence about the scandal.”
    (元大統領があのスキャンダルについて、ついに沈黙を破った。)
  • “The Queen breaks her silence on X’s departure”
    (Xの離脱について沈黙を破った女王)


「~について」を意味する関連の前置詞は、
on ”  または  ” about ”  が一般的。

 

 

【関連表現】

“a moment of silence”
https://mickeyweb.info/archives/3513
(黙祷)

“Silence is gold.”
“Silence is golden.”
(沈黙は金。)

 

 

 

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