文書業務、 事務作業、 事務手続き
紙を扱う仕事だから「 文書業務 」。
【発音】 péɪpɚwɝ̀k
【音節】 pa-per-work (3音節)
不可算名詞( 後述 )である。
- 名詞 ” paper “( 紙 )
- 名詞 ” work “( 仕事 )
本来は、中立的な意味合い。
ところが、なぜかネガティブな文脈で
使われる場面が日常的に見受けられる。
粗末な扱い に甘んずる位置づけの印象。
–
- I got sick and tired of endless paperwork.
( とめどない書類作成にうんざりした。)
–- I have to deal with a lot of paperwork.
( 大量の書類仕事をやらねばならない。)
–- I’m wasting my time doing paperwork.
( 文書業務なんかで時間を浪費している。)
–- I spent my weekend preparing paperwork.
( 書類作成に週末を費やした。)
–- I did all my paperwork during lunch break.
( 昼休みに事務手続きをすべて終えたよ。)
–- I don’t want to wait until all paperwork is perfect.
( 書類が完全に整うまでなんて、待ちたくない。)
–
こんな風にぶちまけたりする。
オフィスにおける代表的な使用例である。
文書業務は、円滑な業務運用や手続きに
欠かせない仕事の一部( 後述の語釈参照 )。
しかし、創造性や生産性とは無縁で、誰に
でもできる「 作業 」とみなされている様子。
その割に注意力を要し、手抜き は ご法度 で、
時間がかかる。
手書きで書き損じた場合、文書によっては、
一からやり直す 必要が生じることさえある。
こうして、荷厄介な仕事未満の面倒事として、
大勢が毛嫌いするのが ” paperwork “。
–
◆ 先に記した通り、成り立ちは単純。
2つの名詞を合わせた 不可算名詞。
” paper ” と ” work ” は、ともに可算と不可算を兼ねる
名詞である。
日本人学習者が混乱しがちな点なので、
これから詳しく見ていこう。
ー
” paperwork ” の数々
ー
–
■ paper ( 可算・不可算 )
語源は、ラテン語「 パピルス 」( papȳrus )。
【発音】 péipər
【音節】 pa-per (2音節)
パピルス とは、 水生植物の一種。
–
紙がパピルスで作られたことから、” paper ” に。
「 パピルス 」は、 シャープ の電子辞書の名称として、
名を馳せた。
その後、 「 Brain 」 に移行した。
–
□ 名詞 ” paper ” のポイント5つ
- 原則は、不可算
–
「 紙 」 と言えば、 普通は 「 不可算名詞 」
– - 「紙」が成果物になったものは、可算名詞
–
【例】 新聞、 論文、 答案、 紙袋
– - 可算・不可算を兼ねるものもある ( どちらも使う )
–
【例】 「 壁紙 」( wallpaper )
– - 複数扱いの ” papers ” で、 総称的な「 証明書 」「 書類 」
–
【例】
– 身分証明書 ( identification papers )
– 入管書類 ( immigration papers )
– - 不可算の 「 紙 」 には、 決まり表現がある
–
【例】
– ” a sheet of paper ”
– ” three sheets of paper ”
– ” a roll of paper ”
–
–
◇ 不可算の「 水 」の
– ” a glass of water ”
– ” three glasses of water ”
と重なるパターンである。
–
「 単位 」「 容器 」 による < 輪郭づけ > である。
–
【参照】 ” hot water “
■ work ( 可算・不可算 )
語源は、古英語「労働」(weorc)。
【発音】 wərk
【音節】 work (1音節)
□ 名詞 ” work ” のポイント4つ
- 原則は、不可算
–
「仕事」と言えば、普通は不可算名詞。
職業としての「 総称的な仕事 」を指す。–
– - 具体的に課せられた「任務」や
特定の「勤め口」としての「仕事」は、
可算名詞が原則–
–
次の類義語と同じ。
– task
– job
– assignment
– duty
– - 「仕事」が成果物になったものは、可算名詞
–
【例】 著作、 芸術作品
– - 複数扱いの “works” で、特に「工事」「事業」
–
” work ” のままでも使われることもある。
–
【例】
– 基礎工事( ground works )
– 公共事業( public works )
–
上記のポイントは似通っている。
–
なぜなら、可算と不可算を区別する視点が
同じだからである。
◇ 不可算 → 抽象的な概念
◇ 可算 → 形の見えるもの
中級学習者 なら、これらの原則は学習済み。
「 例外 」が多すぎるように感じるため、混乱してしまうのだ。
–
< paper >
「 紙 」は、もともと 「 ロール状の塊 」。
どうにも 数えようのない、どでかい 物質
として、不可算。
例えば、こちら。
両端に写る人間を凌駕する「ジャンボロール」である。
–
「 食パン 」も、同様の考え方で、不可算名詞。
< work >
割り当てられるまで は、
抽象的な、職業としての「 総称的な仕事 」
として、不可算。
【参照】 “ in place “、 “ take action ”、 “ acting “
–
区別の基本は、以上の通り。
私たち日本人には、かなり分かりにくい。
「 例外 」に思えるものにも、実は筋道が成り立つ。
確かに、数ある「 例外 」を学ぶのは大変だが、
「 基礎知識 」を押さえるのは、さほど難しくない。
–
【参考】 ※ 外部サイト
・ 可算と不可算を見分ける簡単なコツ
・ 可算と不可算を兼ねる名詞について
・ 可算と不可算についてよくある質問
・ 不可算名詞は「物質」「抽象」「固有」の3つ
◆ ” paperwork ” が 不可算名詞 であることに、
異説はない模様。
後掲の 4大学習英英辞典( EFL辞典 )は、すべて
“ uncountable “( 不可算 ) と明記する。
- 不可算名詞 ” paper “( 紙 )
→ 具体的な成果物ではない
– - 不可算名詞 ” work “( 仕事 )
→ 総称的なやるべきこと
ここでは両方が不可算名詞。
それが合わさった ” paperwork ” が
不可算なのは、自然の成り行き。
初出は、1587年。
最初は「 紙製の作品 」を意味したが、
1889年から「 文書業務 」に。
–
–
” paperwork “
- 1. work such as writing letters or reports,
which must be done but is not very interesting.
2. the documents that you need for a business
deal, a journey etc.
( LDOCE6、ロングマン )
–- 1. the written work that is part of a job,
such as filling in forms or writing letters
and reports.
2. all the documents that you need for
something, such as a court case or
buying a house.
( OALD9、オックスフォード )
–- – part of a job that involves writing
letters and reports and keeping records.
– the written records connected with a
particular job, deal, trip, etc.
( CALD4、ケンブリッジ )
–- Paperwork is the routine part of a job
which involves writing or dealing with
letters, reports, and records.
( COBUILD9、コウビルド )【発音】 péɪpɚwɝ̀k
【音節】 pa-per-work (3音節)–
※ 下線・下線は引用者
‐
4点とも似たり寄ったりで、 月並みの
「 文書業務 」「 事務作業 」を説明する。
唯一、個性を認めるのは下線部( 赤字 )。
「 退屈 」 を示唆する ” LDOCE6 “。
軽視の対象であることを匂わせている。
そうなる理由は既に触れた。
カタカナの「 ペーパーワーク 」にも、
「 ペーパードライバー 」( 和製語 )のような
軽い響きをかすかに覚える。
いかがだろう。
–
–
ペーパーワーク【paperwork】事務処理。 事務手続き。
( 大辞林 第四版 )
–1. 文書を扱う事務の仕事。
書類を作成する仕事。
2. 紙で作ること。またその作品。
( 広辞苑 第七版 )
–
◆ ” paper ” とはいえ、 2024年現在は、
電子版( electronic )文書 が盛んに導入されている。
–
英語圏の記入用紙では普通に見られる書式。
社員対象の事務手続きの場合、大組織であれば、
電子的な ” paperwork ” の方が一般的であろう。
電子メール経由の提出や決裁が容易で、時間短縮
につながる。
デジタル署名や電子署名 を用いれば、「 紙 」と
変わらぬ効力をもたらす。
全般的に管理しやすいのが、 電子版の利点である。
電子化の流れは、 時代の趨勢に沿っている。
【参考】 電子版 vs 「 自炊 」
ただし、 ” wet ” 指定があれば、「 直筆 」 かつ 「 原本 」。
◆ 冒頭に掲げた6つの例文は、不可算名詞
” paperwork ” の使い方の基本を表す。
” paperwork ” につながる主な単語( 連語 ) は、
次の通り。
–
–
–
“ Oxford Collocations Dictionary for
Students of English “
( アプリ版 )※ 漢字は追加
–
このように「 コロケーション辞典 ( 連語辞典 )」を
引けば、組む べき単語をすぐ調べることができる。
–
- “Paperwork is pervasive.”
(事務手続きがまん延している。)
(事務作業がやたらと多すぎる。)
– - “I submitted the paperwork at the courthouse.”
(裁判所に書類を提出した。)
– - ” We’ll have all the paperwork finished if you
just bear with me for a few more minutes.”
( あと数分ご辛抱いただければ、事務手続きは終わります。)
< コロケーションについて >
–
・ aware
・ LDOCE( ロングマン現代英英辞典 )
・ 辞書の「 自炊 」と辞書アプリ
・ 英語辞書は「 紙 」か「 電子版 」か
–
【実例】 ※ 辞書アプリの転載あり
threshold、 damage、 scrutin
backdrop、 strugg
bombshell、 alternative、 feasible、
disparity、 presence