Hopefully
2023/04/21
できることなら
自分の希望を人前で表現する際、
露骨すぎると印象がよくない。
子どもなら許されても、社会人の場合、
全体の兼ね合いを考慮する必要が出てくる。
さもないと、思わぬ反発を買ったり、自分勝手な
人だと思われたり、七面倒な問題が生じかねない。
–
■ 口頭・文面問わず、< 婉曲表現 >
を 上手に練り込んでいく工夫 は重要。
■ 相手を下手に刺激しないようにしつつ、
こちらの 言い分をきちんと伝達する。
–
婉曲( えんきょく )とは、 直接的で無作法な露骨さを避け、
感情をむき出しにせず、 穏やかに柔らかく遠回しに表現すること。
日本語でも英語でも、この考え方はさほど変わらない。–
◇ なんやかんやと言っても、
人間は感情で動く傾向が強い。
–
これぞ、人間の本質である気がする。
馬齢を重ね、ますます確信するに至る。
–
–
民衆の圧倒的多数は、冷静な熟慮よりも
むしろ感情的な感じで考え方や行動を決める。アドルフ・ヒトラー (1889 – 1945)
『 わが闘争 』( 1925 – 1926年刊 )
角川文庫 平野一郎、 将積茂(訳)
–
◆ 長く働いていると、このような ” soft skills ”
( ソフトスキル )こそ、 キャリアの行方を左右
することが理解できるようになる。
すなわち、対人的な意思疎通を行なう能力。
” human skills “( ヒューマンスキル )とほぼ重なる。
測定・数値化が難しいためか、学校では教えにくい。
コミュニケーション上の「 気遣い 」ができるかどうかで、
社会人として大差 がつくなんて、学生時代は「 気休め 」
程度にしか考えていなかった。
世間知らずそのもの。
しかし、 何十年も働いてきて思うに、本当にそうだった。
転職 多きキャリアだったが、 どこにいってもそうだった。
–
◇ 長期に渡る関係であれば、 確実に影響する
–
と断言したくなる。
ー
春秋に富む若き俊英の皆様は、念頭に置くとよいかもしれない。
いずれ、 分かる日がきっとやってくる。
【参考】 ※ 外部サイト、和文
- リスキリングの盲点
ハードスキルはAIが代替、 4つのソフトスキルで打ち勝つ
https://style.nikkei.com/article/DGXZQOLM281PT0Y3A320C2000000
2023年4月19日付
– - ハードスキルだけで出世する人はいない
https://japan.zdnet.com/article/35106655/
2017年9月7日付
– - 人望のない人は「 たった一言 」が添えられない
https://toyokeizai.net/articles/-/164314
2017年4月15日
– - 「 ハードスキル 」 と 「 ソフトスキル 」 を両立せよ
https://active.nikkeibp.co.jp/atclact/active/17/012600007/012600003/
2017年2月1日付
– - ソフトスキルの重要性 ” The Soft Skills Imperative ”
https://www.adeccogroup.jp/-/media/files/adeccogroup/power-of-work/026/soft-skills-imperative_japanese.pdf
( アデコ株式会社、 PDF 全12頁、 4.2MB )
–
–
◆ 長らく ” hard skills “ ( ハードスキル、 知識・技術面 )
しか磨いてこなかったため、 無数の苦い失敗だらけ。
ー
日本語でも英語でも、 あけすけに言って、意に介さず。ー
なんでもかんでも、 歯に衣着せぬ物言い。
ずけずけ言ったり、書いたり で、 これまで散々な目にあってきた。–
汗顔の至り。
ー
今も色鮮やかに蘇る、 恥ずかしい場面の数々。
恥辱・屈辱のあまり、 瞬時に脳裏に焼き付いたものだ。
ー
派手にやらかし、 我が身をもって学ぶ 結果となってしまった。
ー
だからこそ、弊サイトでは、反発を買いにくい婉曲表現を
力説している。 –
反省を込めて。
–
【参照】 ” It’s a long story. ”
–
とは申せ、 相変わらず、 赤っ恥をかく日々が続いている。
叱られまくって半世紀、 日毎夜毎、 語彙力を強化中。
かくして、 学習は進み、 弊サイトの題材が生まれる。
幸ひなり幸ひなり。– めでたしめでたし。
ー
ー
◆ さて、 表題 ” hopefully”。 –
副詞である。
【発音】 hóupfəli
【音節】 hope-ful-ly (3音節)
–
「 できることなら 」 「 願わくば 」 が定訳に近い。
「 願わくば 」 は意味合いとしての定訳である。
–
日頃、口にする機会は、ほぼほぼない日本語。
–
–ねがわくは【 願わくは 】
- ( 「ねがふ」のク語法に助詞「は」の付いたもの。
江戸時代ごろからネガワクバともいうようになった )
願うところは。 望むところは。 どうぞ( … してほしい )。
( 広辞苑 第七版 )
– - ( 下に「ことを」や命令形などを伴って )
そうなることを望む意を表す。 願うことは。 どうか。
( 大辞林 第四版 )
–
現在ではこの用法が ” hopefully ” の標準的な意味と
なっているが、 本来の意味は「 希望 ・ 期待をもって 」。
3大学習英英辞典( EFL辞典 )の語釈は、
–
” hopefully “
- showing hope.
( OALD、オックスフォード )
– - in a hopeful way.
( CALD4、ケンブリッジ )
– - in a way that shows that you are hopeful.
( LDOCE6、ロングマン )
【発音】 hóupfəli
【音節】 hope-ful-ly (3音節)
–
◆ 成り立ちは次の通り。
名詞 ” hope “( 希望・期待 ) + 接尾辞 ” ful “( 満ちた )
で、 形容詞 ” hopeful “( 希望・期待に満ちた )。
形容詞を副詞にする接尾辞 ” ly ” を付け足し、
副詞 ” hopefully “( 希望・期待に満ちて )。
「 希望・期待に満ちて 」 とは「 希望・期待をもって 」
ということ。
–
「 満ちて 」だと、 日常使いには大げさなきらいがある。
よって、 少々手を加えて和訳されることが多い。
- “I was waiting hopefully to see her face.”
(彼女の顔を見れるかと期待して待っていた。)
– - “He asked hopefully for a cigarette.”
(たばこ1本譲ってもらえることを期待して尋ねた。)
– - “He looked at her hopefully.”
(彼は期待をもって彼女を見つめた。)
– - “‘Is there any leftover cake ? ”
she hopefully asked.
(「 ケーキ残っている? 」 彼女は期待して聞いた。)-“
以上の用法が正式とされる。
–
◆ ところが、実際の使われ方として一般的なのは、
「 できることなら 」 「 願わくば 」。
日常口語で ” hopefully ” と言えば、 ほとんどこっち。
” it is hoped ” または ” it is to be hoped ” の換言である。
–
” hopefully “
- used to express what you hope will happen.
( OALD9、オックスフォード )
– - used, often at the start of a sentence,
to express what you would like to happen.
( CALD4、ケンブリッジ )
【発音】 hóupfəli
【音節】 hope-ful-ly (3音節)
–
◆ 一方、この用法は、
文法的に ” not correct “、” incorrect “(正しくない)
と主張する専門家や作家がいる。
その旨、注記( 以下青字 )する英英、英和辞典が目立つ。
–
” hopefully “
- a way of saying what you hope will happen,
which some people think is incorrect.
( LDOCE6、ロングマン )
– - Although this is the most common use of
hopefully, it is a fairly new use and some
people think it is not correct.
( OALD9、オックスフォード )
– - The used of hopefully to mean it is hoped
used to be considered incorrect by some
people but has now become acceptable
in informal contexts.
( Collins English Dictionary )
– - 標準語法として確立しているが
この用法に批判的な人もいる。
( ジーニアス英和大辞典 )
–
※ 色、下線は引用者
【発音】 hóupfəli
【音節】 hope-ful-ly (3音節)
–
どの辞書も歯切れが悪い。
下線部 ” some people ” 及び「 人もいる 」が示すように、
揃いに揃って、他人事のように書いている。
経緯不詳で、言い切る自信がないに違いない。
こういう場合、” some people ” などと書いて逃げる
のが、辞書の常套手段。
–
◆ そこで、さらに調べてみた。
–
Can HOPEFULLY mean ” I hope ? ”
In the 1960s the second sense of hopefully
( ” it is hoped ” ), which dates to the early 18th
century and had been in fairy widespread use
since at least the 1930s, underwent a surge in
popularity. A surge of criticism followed in reaction,
but the criticism took no account of the grammar
of adverbs. (…) The ” it is hoped ” sense of hopefully
is entirely standard.
–
–
–
メリアム ウェブスター
https://www.merriam-webster.com/dictionary/hopefully
※ 色字は引用者
–
英語ネイティブ向けの英英辞典( アメリカ系 )なので、
やや難解である。
要約すると、1930年代から広く使われるようになった
” I hope “( ≒ できることなら、願わくば ) の用法は、
1960年代に主流になった。
人気に伴い批判も生じたが、今では標準語法 となっている。
次の有力語源サイトでも、” it is to be hoped that ”
が不自然な言い回しと認めている( 太字 )。
” hopefully ” は、その代わりとなる語と位置づけている。
–
” hopefully “
As a replacement for the admittedly awkward
‘ it is to be hoped that ‘, attested from 1932
but avoided by careful writers.
–
–
–
Online Etumology Dictionary
https://www.etymonline.com/word/hopefully
※ 太字、下線は引用者
–
「 希望・期待をもって 」との本義よりも、
標準的な用法となっている実態を認めつつ
( 上掲オレンジ字 )、注を入れている。
これが、ご紹介した辞書の有様である。
–
◆ この問題に関しては、一般ユーザーである私たちが
ことさら神経質になる必要はない。
名だたる辞書の曖昧模糊とした説明から推察できる
ように、 学者レベルの論点だと考えられる。
英語ネイティブの使う ” hopefully ” も、 少なくとも口頭では、
「 できることなら」「 願わくば 」を意味するのが普通である。
” hopefully ” が 「 希望・期待 をもって 」の意味で、
口頭使用された場面に居合わせた覚えは、私にはない。
もっとも、 文面ではまれに見かける。
–
◆ したがって、
” hopefully ” = 「 できることなら 」「 願わくば 」
で覚えてよいだろう。
「 できることなら 」 「 願わくば 」 が婉曲表現に
に近い点は、 日本語から考えると分かるであろう。
「 クッション言葉 」 に似通う効用。
いうなれば、予防線を張っている。
–
–
クッション言葉 とは、相手に何かをお願いをしたり、
お断りをしたり、異論を唱える場合などに、
言葉の前に添えて使用する言葉です。上手く活用する事で直接的な表現を避けられ、
丁寧で優しい印象を相手に与える効果があります。否定的な言葉など言いにくい内容でも、
相手に失礼にならずに伝える事が出来る
ので知っておくと大変役に立ちます。
–… ビジネス会話の基本 「 クッション言葉 」
◇ 「 できましたら 」 も一覧に挙げられている
※ 太字、赤字は引用者
–
先述のCALD4に説明されているように(緑字)、
この用法では、文頭に使われることが多い。
それでも、 文中・文末に置かれることは珍しくない。
以下の例文で、” hopefully ” の与えるソフトな語感
を感じ取っていただきたい。
【参照】 “ hope ” の特色は、 ほんわかとした語感
–
できれば
- “Hopefully, this should give you a
good career opportunity.”
(これがあなたのキャリアにとって、
よい機会になればいいのですが。)
– - “Hopefully, this blog will help you improve your English skills.”
(このブログが英語力の向上に役立てばよいのですが。)
– - “Hopefully, it works now.”
(これで、今、直っていればいいのですが。)
– - “Hopefully, she will come back here.”
(できれば、彼女がここに戻ってくるといいのですが。)
– - “Hopefully, we are back to full capabilities by next week.”
(来週までに、元通りになっていればよいのですが。)
– - “Hopefully, you will come back one day.”
- “Hopefully, we will see you back one day.”
(いつか戻ってきていただけることを願っています。)
– - “By the time he returns here, this will hopefully
have been solved.”
(彼が戻るまでに、これが解決できていれば
よいのですが。)
– - “A vaccine will be available, hopefully by year’s end.”
(うまくいけば、今年の年末までに、ワクチンが利用可能
になるだろう。)
– - “Hopefully, I’ve answered your question.”
(ご質問への答えになっていればよいのですが。)–
– - “I’m hopefully going to pass the test this time.”
(できることなら、今度こそは試験に合格したい。)
– - “Hopefully, this won’t drag out too long.”
(これが異常に長引かなければよいのですが。)
– - “Hopefully, it won’t rain today.”
(今日、雨が降らなければよいのだが。)
– - “You would find this useful, hopefully.”
(これが一助になればよいのですが。)
– - “Hopefully, enjoy the video.”
(この動画を楽しんでいただければ幸いです。)
– - “My son wants to be a doctor.
Hopefully, he will follow through.”
(息子は医者になりたがっている。
達成できればいいのですが。)
– - “I wrote an article that will hopefully
answer some of your questions.”
(記事を1本書きましたが、これで皆様の
疑問がいくつか解消されれば幸いです。)
【関連表現】
- ” if any ”
https://mickeyweb.info/archives/19298
( もしあれば )
– - “ high hopes ”
https://mickeyweb.info/archives/5827
( 大きな期待 )
– - “ Hope this helps. ”
https://mickeyweb.info/archives/6691
( ご参考になれば幸いです。)