爆弾、 突発事件、 衝撃
” bombshell ” には、 名詞と形容詞がある。
最も基本となるのが、 可算名詞。
形容詞はマイナー用法。
英単語全体から見れば、 重要でも頻出でもない。
今回調べた 9点の英英辞典 すべてがノーマーク。
例えば、 LDOCE6( ロングマン )では、 全3項目ランク外。
-
重要度 : 9000語圏外
-
書き言葉の頻出度 : 3000語圏外
- 話し言葉の頻出度 : 3000語圏外
しかし、 ニュース見出し にはちょくちょく顔を出す。
重要でも頻出でもない割に、 いざお出ましの際は、
強烈な 存在感 を放つのが、 ” bombshell “。
記事の中身は、 軒並み衝撃的である。
” bombshell ” の描く 「 衝撃 」 は、 度合いの激しさ及び
変化や動きが突然の様子、 すなわち急激さの両方をカバーする。
その結果 「 思いがけない出来事 」 を表すことに。
ひいては 「 突発事件 」 を指す。
受け手にとっては予想外。
「 寝耳に水!」 「 不意打ち!」 と激しく動揺し、
ぶったまげ たり、 びっくり仰天 したり。
程度の差はあれど、 天下の耳目を驚かす出来事こそ、
” bombshell “。
–
–
It was an absolute bombshell.それはまったく 衝撃的 だった。
–
–
◆ 語原は、
この上なく物騒な2語が合体したもの。
内容が激しくなるのは、 自然の数。
- 語原通りの 「 爆発物 」 としての初出は、18世紀 ( 1708年 )
- ここから展開した 「 思いがけない出来事 」 は、19世紀 ( 1859年 )
- さらに発展した俗語 「 官能的で魅力のある女性 」 は、20世紀 ( 1942年 )
–
… 語原サイトより
https://www.etymonline.com/word/bombshell#etymonline_v_27278
–
◆ ” bombshell ” の主な意味は、 上記3つのハイライト。
派生の流れを追うのは、 難しくない。
こんな感じ。
–
どちらも感情の高ぶりを覚えがちの対象であろう。
” a blonde bombshell ” ときたら、「 ブロンド美人 」。
先の 英英9点 全部が記載する語釈である。
例えば、
” blonde bombshell “
humorous a sexually attractive woman
with light-coloured hair.
( LDOCE6、ロングマン )
” a blond(e) bombshell “
a very attractive woman with blonde hair.
( OALD9、オックスフォード )
※ 下線は引用者
–
LDOCE が ” sexually ” と明け透けに説明するのに対し、
OALD は ” very attractive ” と控え目。
” blond bombshell ” で、” b ” と ” b” 。
2単語が出だし ( 語頭 ) で韻を踏み ( 押韻 )、 耳心地がよい。
これは「 頭韻( とういん )」である。
英語では、” head rhyme ” または ” alliteration “。
同例を挙げると、
–
有名な頭韻の商標名・固有名詞は、
“ first and foremost ” で 一覧にした。
–
◆ 「 頭韻 」 の反対は 「 脚韻( きゃくいん )」。
この ” end rhyme ” の一例は、 ” nitty-gritty “。
” blond bombshell ” は、 妙になまめかしく、
同時に迫力のみなぎる語感を印象づける。
” blond ” も ” bombshell ” も、 子音 ” b ” から始まる( 頭子音 )。
–
[b] は、 英日共通 の 破裂音 ( はれつおん )。
- 英語の 破裂音 plosive は 6つ
[p][t][k][b][d][g]
具体的には「 有声両唇破裂音 」。
–
多くの言語に存在する音である。
頭子音が韻を踏んでおり、日本語ネイティブにも
威勢のよい雰囲氣を読み取ることができる。
- 日本語音声の [b] 例 → 「 ぶ か 」 「 ぶ き 」 「 ぶ し 」
–
※ ぶ = [bɯ]、 ば = [ba]、 べ = [be]、 ぼ = [bo] の頭子音
– - 英語音声の [b] 例 → ” bad ” ” book ” ” booze “
–
口角泡を飛ばして、
- バ カ !
- ブ タ !
- バ バァ !
- ブ ス !
- ボ イン !
とありったけの いけず口ぬかす 場面の語調は激しい。
皆一様に、 有声両唇破裂音。
–
「 音声 」「 音節 」の詳細と日英比較は、” integrity ” で深掘りした
( 図入り )。
◆ 以下、 ” no need ” より再掲。
口周りの運動が大振りなため、 舌・唇・歯・呼吸間の相互作用が
分かりやすい、 英語ネイティブの おすすめ YouTuber をご紹介。
–
–
この度合いの激動は、 日本語を話す際には、 見られないと言ってよい。日英の音 ・ 言語習慣 ・ 音節構造 ・ ジェスチャー の大差が垣間見れる。–
ゴムのように伸縮自在の口唇から放たれる、 抑揚満載の口調がたまらん。
とりわけ、 有声 [b] [m]、 無声 [p] の子音で始まる単語を発音する口元。
3つとも 「 両唇音 」( bilabial ) で、 上唇と下唇が強めに接触。
両唇を勢いよく口中に巻き込み、 直後にぷっと一息で突き出す。
これほど分かりやすい動きを示す英語話者を私は見たことない。
口唇と舌の激しい動作にしびれ、 毎度うっとり見とれてしまう。
音声を消して、 口周りを凝視すると、 日本語にはない動きを見て取れる。
外国人の仰々しい表情とジェスチャー( 身振り )に見慣れる上でも役立つ。
頭の回転が速く、 語りは猛スピードであるが、 中級者 であればいける。
表現力も豊かゆえ、 彼女専用の「 単語帳 」 を2022年より作成している。
–
見本にする英語の先生を選ぶ際は、 ベロ出しの有無が目のつけ所のひとつ。
AI相手に英会話の練習をし続ける大なる欠点は、 表情と口元が見えにくいこと。
平板で均一なリズムの日本語が母語の私たちの口周りは、 こんな風に動かない。
普段は 舌運び を意識しないからこそ、 物珍しい眺めでびっくりするはず。
上掲 ” no need ” に加えて、 ” integrity ” 、 ” smooth out “、 ” hiatus ”
にて、 学習上の着目点を事細かに記した ( 図入り、 写真入り )。
→ Joce の 頻出表現 ( 動画入り )
👄 唇をよく見て 🫦
◆ ” blonde bombshell ” 系の使い道は、 いかんせん限られる。
時事ニュースとビジネスでは、 魅惑の匂い立つ 「 悩殺的な美女 」
は場違い。
お堅いメディアにそぐわない。
したがって、 ニュース用法としては、 語原に沿った「 爆弾 」。
そして 「 突発事件 」。
この辺の意味合いが一般的。
3大学習英英辞典 ( EFL辞典 ) でも明らか。
持ち前の 「 激しさ 」 は、 下線の形容詞が示す。
–
” bombshell “
■ an unexpected and very shocking piece of news.
(LDOCE6、ロングマン)
■ Usually singular, informal
an event or a piece of news which is unexpected
and usually unpleasant.
(OALD9、オックスフォード)
■ INFORMAL
a sudden and often unpleasant piece of news.
(CALD4、ケンブリッジ)
※ 下線は引用者
【発音】 bɑ́mʃɛ̀l
【音節】 bomb-shell (2音節)
–
OALD と CALD は、 ” informal ” と表示する。
くだけた表現、非正式ということ。
OALDの ” usually singular ” は、「 通常は単数名詞」の意。
–
単数名詞( singular noun )とは、
単数形で使われるのが一般的な名詞。
英英辞書では “ S ” または “ sing ” と略記されたりする。
単数名詞の辞書表示には、かなりのばらつきがみられる。
他の2点には記されていない。
–
◆ 多用される名詞用例を5つ。
-
bombshell announcement
( 爆弾発表 ) -
bombshell question
( 爆弾質問 ) -
bombshell revelation
( 爆弾発言、 爆弾告白、 衝撃的な暴露 ) -
bombshell statement
( 爆弾発言、 爆弾告発 ) -
bombshell report
( 爆弾報道 )
–
5つとも 「 爆弾 」 めいたインパクト。
日本のメディアも使う言い回しばかり。
動詞を用いて表現すると、
–
- ” He dropped his bombshell during the press conference. “
- ” He dropped a bombshell during the press conference. ”
( 彼はその記者会見中に 爆弾〇〇 を実行した。)
–
他動詞 ” drop” ( 落とす ) で 「 爆弾を落とす 」 が直訳。
- 彼は会見中に 爆弾発表 をした。
- 彼は会見中に 爆弾質問 をした。
- 彼は会見中に 爆弾発言 をした。
- 彼は会見中に 爆弾告白 をした。
- 彼は会見中に 爆弾宣言 をした。
- 彼は会見中に 爆弾告発 をした。
「 爆弾を落とす 」は比喩であるのが通例なので、
状況に応じて和訳は違ってくる。
そのため、「 ○○ 」で示した。
” drop ” の代わりに、他動詞 ” explode “( 爆発させる )もOK。
【発音】 iksplóud
【音節】 ex-plode (2音節)
意味が重なるのは、中級学習者 なら理解できよう。
また、自動詞 “come” や be動詞 を用いて、
–
- His bombshell came during the press conference.
- The bombshell came during the press conference.
- His came as a bombshell
- A came as a bombshell
- His was a bombshell
–
ここに示した黄ハイライトは、次のコロケーション辞典
にそのまま記載されている。
時制などにより、 語形変化 ( 活用 ) を伴うのは言うまでもない。
【例】 come → came ( 過去形 past tense )
–
“ Oxford Collocations Dictionary for Students of English “
(アプリ版)より転載
–
–
–
『 新編 英和活用大辞典 』
(アプリ版)より転載
–
ともに、 定評のある 辞典。
重要度・頻出度は大半の辞書で「 ランク外 」にもかかわらず、
でかでかと取り上げられる “ bombshell ”。
マイナーな単語のはずなのに、 なぜ ?
英単語全体から見た評価と、実務における有用性の差異
を示唆するものと考えられる。
要は、< 実務上の需要 > が高い。
こちらに似通う持ち味である。
◆ 2019年新年早々、 大々的に発表されたニュース見出しから、
” bombshell ” を抽出してみた。
–
※ 2019年1月7日 初稿時点
- ” Dow slides after X delivers bombshell warning ”
( NYダウ、X社の衝撃発表後に急落 )
– - ” Bombshell report on longtime Fox News host X ”
( 長年のフォックス・ニュースの司会者Xに関する爆弾報道 )
ー - ” Dow falls 660 points on X bombshell ”
( NYダウ、X社の爆弾発言で660ドル安 )
ー - ” ROYAL BOMBSHELL: Letter reveals how
Queen Begged King not to abdicate ”
( 王室の衝撃事実:王に退位せぬよう女王は
手紙でどう懇願したか )
ー - ” Y Makes Bombshell Admission About Not
Being The Greatest Of All-Time ”
( Yの爆弾告白:自分は史上最高の選手でない )
ー - ” Z bombshell: President can be indicted in office ”
( Zの爆弾発言:大統領在任中の告発もあり )
ー - ” MD Drops Bombshell About 5G Technology Dangers ”
( 5G通信の危険性について医師が爆弾告発 )
ー
採集 に要したのは、 たった5分。
本当にもてもての有様であった。
–
–
◆ 2020年以降のニュース報道からも、 追加でご案内。
- ” The Royal Family has officially responded to
the bombshell news that they are stepping down. ”
( 王室は彼らが離脱するとの衝撃ニュースに公式対応 )
– - ” She dropped a bombshell revelation about her family. ”
( 彼女は自分の家族に関する衝撃的な暴露をした。)
– - ” His bombshell book is set to be published on January 10.”
( 彼の暴露本は1月10日に出版される予定です。)
– - ” President’s Tax Records Bombshell ”
( 大統領の納税記録の衝撃 )
– - ” Rita Hayworth: A Bombshell Diagnosis ”
https://www.alz.org/news/2023/rita-hayworth-a-bombshell-diagnosis
( リタ・ヘイワース : 衝撃の診断 )
–
※ 「 悩殺的な美女 」 で大人気だった女優 ( 1918-1987 )。
→ ” bombshell ” はこの意味も示唆するので、 ここは掛け詞。
– - ” She revealed that she was a survivor of domestic abuse,
a bombshell that many readers may have not expected.”
( 彼女はDVの被害者だったことを告白したが、
それは多くの読者が予期せぬ爆弾発言だった。)
– - ” X refuses to resign after bombshell sexual harassment report ”
( X、衝撃のセクハラ報道後も辞任拒否 )
– - ” HuffPost published a bombshell report about sexual misconduct at X.”
( ハフポストは、X社の性的な不正行為に関する爆弾報道を掲載した。)
– - ” Bombshell picture shows X holding can of beer at lockdown
birthday party “– - ” Bombshell pic shows X with beer at lockdown bash ”
( ロックダウン中、誕生会でビールを手にする X の衝撃写真 )
– - ” Major bombshells from Prince’s X interview ”
( 王子X の数々の大爆弾インタビュー発言 )
– - ” X Opens up About Her Bombshell Memoir ”
( X、衝撃の回顧録について明かす )
– - ” Prince X’s latest bombshells ”
( X王子の最新の爆弾発言 )
– - ” The biggest bombshells from defamation trial ”
( 名誉棄損裁判の最大級の大爆弾 )
– - ” X Angry After Y Divorce Bombshell ”
( Yからの電撃離婚で怒るX )
ー
◆ 1979年創刊の日本のアイドル系グラビア雑誌 『 BOMB 』 は、
「 ボム 」。
◇ 「 見出し 」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方( 見出し編 )RNN時事英語
< コロケーションについて >
・ “aware”
・ LDOCE(ロングマン現代英英辞典)
・ 辞書の「自炊」と辞書アプリ
・ 英語辞書は「紙」か「電子版」か
–
【実例】 ※ 辞書アプリの転載あり
“threshold“、”damage“、 “scrutiny“、
“backdrop“、”paperwork“、”struggle”、
“downfall“、”alternative”、”feasible”、
“disparity“、”presence”