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Scam

      2024/11/20

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 13 minutes

詐欺

「 詐欺 」と言えば、 ” fraud ” が基本。

【発音】  frɔ́ːd  (1音節)

語源は、 ラテン語 「 詐欺 」( fraudem )。

生まれからして、 立派。

早くも14世紀から、 法律英語として確立している。

抽象的な 「 詐欺 」 の意味では、 不可算名詞 である。

個別具体的な 「 詐欺行為 」 の場合、 可算名詞となる。

■  fraud    名詞のみ で、 動詞はない


” fraud ”  及び その派生語の形容詞  ” fraudulent
は、 関係法令や手順にも正式採用されている。

【発音】  frɔ́dʒələnt
【音節】  fraud-u-lent  (3音節)

  •  fraudulent election ( 不正選挙 )
  •  voter fraud ( 不正投票 )

専門知識のない一般人が認識できる 「 詐欺 」 の総称。

  オレオレ詐欺  →  ” telephone scams ” の 一種  



◆  一方の  ” scam “。

【発音】  skǽm  (1音節)

こちらも 「 詐欺 」 全般を意味する。

けれども、

■  scam  →  名詞 に加えて、 動詞もある


–  他動詞 「 だまし取る 」
–  自動詞 「 詐欺を働く 」

  •  ” I’ve been scammed.”    ※ 現在完了形 ( present perfect )
  •  ” I was scammed.”    ※  過去形 ( past tense
    ( 詐欺に遭いました。)

    ◇  「 完了形 」「 過去形 」 相違点  →  ” better place ”  に詳述
  •  ” How can you avoid being scammed ?
    ( どうすれば詐欺の被害を防げるか。)

【活用形】  scam – scammed – scammed – scamming

  •  ” This website scams people into paying for access to jobs.”
    ( これは求人情報にお金を支払わせる詐欺サイトです。)
  •  ” scam ”  を働く者は  scammer
  •  ” fraud ”  を働く者は  fraudster

いずれも、可算名詞。

  • Cyberscammers  : Pay Up or We’ll Infect Your Family With Coronavirus ”
    ( サイバー詐欺師 : 支払わなければ、ご家族をコロナに感染させます )
    2020年4月29日付    The Daily Beast
    D–
  • ” Feds Suspect Vast Fraud Network Is Targeting
    U.S. Unemployment Systems ”
    ( 米失業保険制度を狙う大規模詐欺ネットワークを連邦捜査局が疑う )
    2020年5月16日付    The New York Times
  • ” Unemployment claims are the latest target
    for coronavirus fraudsters
    ( コロナウイルス詐欺師の最新の標的は失業保険申請 )
    2020年5月18日付    The Washington Post

◆  形容詞  ” scammy ”  も見聞きするが、 俗語扱いが一般的。

市販辞書はもちろん、 オンライン辞書にもあまり出てこない。

【発音】 ˈskæmɪ
【音節】  scam-my  (2音節)

名詞  ” scam ” に、 接尾辞( suffix ) ” y ” をつけた形容詞。

  •  ” This is a scammy product.”
    ( これは詐欺まがいの製品だわ。)
    ( これは詐欺めいた製品だ。)
    ( これは詐欺っぽい製品ね。)
  •  ” I want to avoid scammy ads.”
    ( 詐欺まがい広告を避けたい。)
    ( 詐欺めいた広告を避けたい。)
    ( 詐欺っぽい広告を避けたい。)

◆  詐欺師を退治・撲滅する人や組織を  ” scam buster ” 

と俗に称したりする。

【発音】  bʌ́stər
【音節】  bus-ter  (2音節)

映画にもあった  ” ghostbuster ”  に因んで名付けられたのかも。

▲  詐欺診断サイト

https://www.scamadviser.com/

※  2024年2月9日 アクセス

◆  本稿では、 名詞の ” scam ” を取り上げる。

  •  “Don’t buy this product.  Most likely it’s a scam. “
    (この製品を買ってはいけない。 詐欺に違いない。)
  • ” Is it legit or a scam ?
    ( それは合法か詐欺か ? )
  • “ Scam or Legitimate Program To Make Money ? ”
    ( このプログラムの金儲けは詐欺か合法か?)
  •  ” Tech support scams are on the rise. ”
    ( テクニカルサポートの詐欺が増えている。)※  後述

 

◆  ” fraud ” も ” scam ” も、日常英語 ( everyday English words )。

中学生以上の平均的な英語ネイティブであれば、
難なく認識できる水準。

最大の違いは、 法律用語 としての信用度


” scam ”  は、法律辞典にまともに取り上げられていない。–  ※  後述

その上、 ” scam ”  は、” fraud ” に比べて「 英単語 」としても非正式。

4大学習英英辞典( EFL辞典 )すべてにおいて、

informal ” 表記のあるのが、” scam

  • LDOCE6 ”  ロングマン現代英英辞典 第6版
  • OALD9 ”  オックスフォード現代英英辞典 第9版
  • CALD4 ”  ケンブリッジ現代英英辞典 第4版
  • COBUILD9 ”  コウビルド英英辞典 第9版
    ※  2017年8月1日  初稿時点における各最新版

informal ” とは、「 くだけた表現 」「 非正式 」。

formal “( 堅めの表現、正式 )の対をなす、
英語辞書の凡例用語である。

fraud ” が、ラテン語「 詐欺 」( fraudem )由来であり、
いわば正統派の英単語なのは、 既述の通り。

それに引き換え、” scam ”  の出自は、なんだか怪しい。

 

< ” scam ”  初出 と 語源 >


1963。
もとはカーニバル隠語。

一説には  ” scheme ” の転化。

ランダムハウス英和大辞典 第2版

◇  ” scheme ” = 策謀(可算名詞)

【発音】  skíːm  (1音節)


” scheme” は、 投資詐欺の 「 ポンジ・スキーム 」 が有名かも。

ねずみ講 ( pyramid scheme ) の一種で、 詐欺には違いない。

◆  米国には、 有力な法律辞典が存在する。

Black’s Law Dictionary
=
ブラックス法律辞典


Amazon Japan / Amazon US


1891年に発刊され、130年以上の歴史を誇る。

判例などに最も引用される辞典である。

英米法を学ぶ学生で、知らない者は皆無レベルの 存在感

本稿の初稿時点( 2017年8月 )における最新版
第10版、 2014年刊 )では、” fraud ” の解説に
2ページ以上を割いていた。

こんな具合。


Black’s Law Dictionary, 10th Edition
pp. 775 – 777.  (Thomson Reuters 2014).

画像の拡大

※  枠線は引用者


ところが
、この「 第10版 」( 2014年刊 )には、

 ” scam ” の項目はない。


正式扱いされていないと考えられる。

◇  どちらも 「 詐欺 」 を表す日常語

  fraud 正式な法律用語
  scam 正式な法律用語に満たない


にもかかわらず、名詞 ” scam ” の方を表題に掲げた
理由は、日本で学ぶ機会が少ないと考えるからである。


◆  次いで、 2019年に発行された 「 第11版 」 も確認。


Amazon Japan / Amazon US


Black’s Law Dictionary, 11th Edition
pp. 802 – 805.  (Thomson Reuters 2019).

画像の拡大

※  枠線は引用者


” fraud ” と ” fraudulent ” の説明に、顕著な改訂はみられない。

そして、相変わらず、

 ” scam ” の項目はない。


埋め合わせに、世界最大の英語辞典  ” OED ” 記載の
” scam ” を、 本稿末尾に全文掲載した。

◆  ” scam ” は、 インターネットに日々飛び交う言葉。

  日常的には  ” fraud ” 同然  に使われている


事件の規模は関係なく、被害が金銭中心の詐欺事件 では、
” scam ” が好まれる傾向が若干見られるくらい。

錚々たるメディアでも、 以下の表現は年中見かける。

例えば、経済誌  ” Forbes ”  や  ” The Economist “、さらに
高級紙とされる  ” The New York Time ”  や  ” The Times “。

▲  急増中のロマンス詐欺

( 2024年2月 )

  • romance scam  
    ( ロマンス詐欺、 恋愛詐欺 )

    【参考】    ※  外部サイト ( 和文 )

    ロマンス詐欺は分業制、 マッチングアプリで大流行
    https://newspicks.com/news/10863352/
    2024年11月20日付

    ロマンス詐欺の危険信号3つ
    1)LINEなどへ外部誘導  2)美しい写真  3)変な日本語


  • cryptocurrency scam
  • crypto scam
    ( 暗号通貨詐欺、 仮想通貨詐欺     ※  後述

  • NFT ( non-fungible token ) scam
    ( 非代替性トークン詐欺 –  


  • job offer scam
    ( 就職あっせん詐欺 )


  • cash app scam
    ( 現金アプリ詐欺 )
  • social media scam
    ( ソーシャルメディア詐欺 )


  • credit card scam
    ( クレジットカード詐欺 )

  • charity scam
    ( 義援金詐欺 )

  • ticket scam
    ( チケット詐欺 )
  • government grant scam
    ( 給付金詐欺 )
  • housing scam
    ( 不動産詐欺 )
  • upfront fee scam
  • advance fee scam
    ( 前金詐欺、 手付金詐欺 )
  • timeshare scam
    タイムシェア詐欺
  • offshore scam
    ( オフショア詐欺 )

  • phishing scam
    フィッシング 詐欺 )
  • student loan scam
    ( 学生ローン詐欺 )

  • Nigerian Scam
    ナイジェリア詐欺
  • scam site
    ( 詐欺サイト )
  • sugar daddy  scam
    パパ活詐欺
    ※  援助交際 ( 援交 ) は、 ” no need ”  で言及 ( 動画入り )

  • employment  scam
    ( 雇用詐欺 )
  • online job scam
    ( オンライン求人詐欺 )
  • online dating scam
    ( 出会い系サイト詐欺 )
  • college admissions scam
  • college admissions cheating scam
    ( 大学入試詐欺 )    ※  裏口入学の一種

    <例>
    2019 college admissions scam
    Everything We Know About the College Admissions Scam
    14 Days Behind Bars in Admissions Scam

【参考】    ※  外部サイト ( 英文 )

 

詐欺注意!

https://www.fbi.gov/image-repository

 

【参考】    ※  外部サイト ( 和文 )

 

【 PDF 】

・『 ビジネスメール詐欺「 BEC 」に関する事例と注意喚起
ーー独立行政法人情報処理推進機構、 2017年刊、 全27頁、 8MB

 

フィッシング詐欺かも

 


◆  一般人にとっては、堅苦しい専門用語よりも、
発音しやすい同義語の方が親しみやすかったりする。

  専門家でないため、 正確性は二の次  


こうして、語感や字面重視で普及することは珍しくない。

世間一般においては、こうした流れの方が、むしろ
自然に定着したりする。

結果的に、非公式の言葉がそれなりに目立つことになる。

” scam ” はその好例。

◆  片や  ” fraud ” は、れっきとした法律用語。

歴史もはるかに長く、使用頻度は上回る。

正式には、やはり ” fraud ” なのである。

< 使用頻度 >   

【出典】  コウビルド(COBUILD)/ Collins

fraud  トップ 10,000語以内   /  scam  30,000語以内

 



https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/fraud
https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/scam

※  赤枠は引用者


◆  2語とも、「 詐欺 」 関連では欠かせないものの、
英単語全体から見れば、 さほど重要でも頻出でもない。

LDOCE6( ロングマン )の指標比較

  名詞  “ fraud

  • 重要:<6001~9000語以内>
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

【発音】  frɔ́ːd  (1音節)

 

  名詞  “ scam

  • 重要:9000語圏外
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

【発音】  skǽm  (1音節)

 

◆  なお、” scum “( 浮きかす ) と混同しない  ことは大切。

俗語としては、「  精液  」「 人間の ) くず・かす 」を指す。

” scam ” と重なる、ネガティブイメージ。

スペルも酷似し、 平板で、 均一なリズムの「 カタカナ発音 」の

」( 3音節 )では、一緒に聞こえてしまいがち。

英語では、両方とも「 1音節( one syllable )」。

1音節だから、 腹の底から  ゲロする  勢いで、

キャ

と一気に吐き出す。

日英の音は、 舌・唇・歯・呼吸間の相互作用が
まったく違います

  英   語 「 息の音 」
  日本語 「 声の音 」


キャ

 

「 音節 」( syllable、シラブル ) とは、 発音の最小単位

1音節は 「 発音の最小単位 」 に切れ目がないため、 ゲロ凄みが出る。

日本語の場合、 原則として 「 仮名一字が1音節 」。

そのため、 音節を意識する機会は乏しい。

「 音声 」「 音節 」の詳細と日英比較は、” integrity ” で深掘りした

( 図入り、 動画入り )。


日本語母語話者にとって、

英語の発音は動物の鳴き声に近い。

日本語で表記しがたいのは言うもおろか。

犬猫の声と一緒で、 そもそも日本語では書き起こし

きれないのに、 英語音を無理くり邦文で表現しようとする。

等しく不条理だからアプローチを変える。

口周りをまじまじと見据えて、 模倣する。

 

👄 唇をよく見て 🫦

※  やり方は、 ” integrity ”  へ  ( 図入り、 動画入り )

【参考】    ※  外部サイト

 

◆  ” scum ” も、 日常的に見聞きする。

しかし、品格がぐっと下がる。

卑語でも  禁忌語  でもないが、” scam ” と異なり、
上記メディアには、 めったに出てこない。

推して知るべし。

 

【参照】  ” deceptive

詐欺師

  • “The scammer scammed me for $95.”
    (その詐欺師から95ドルを巻き上げられた。)
  • “She is a con artist who scammed me twice.”
    (彼女は私に二度も詐欺にかけた詐欺師です。)
  • “I was scammed on the telephone by a fraudster.”
    (詐欺師からの電話で詐欺に遭った。)
  • “Tech support scammers are posing as support staff
    from legitimate companies.”
    ( テクニカルサポートの詐欺師たちは、正規の企業のスタッフを装っている。)  


    ▲  サポートスタッフは詐欺師

    ( 2024年7月 )

◆  “ The Oxford English Dictionary ” ( OED )  の ” scam ” 全文がこちら。

“Scam.”  The Oxford English Dictionary.  2nd ed. 1989.


初出は「 1963年 」とある。

前記の『 ランダムハウス英和大辞典 第2版 』と合致する。

◆  既に挙げた ” fraud ” との相違点を繰り返すと、

■  fraud    名詞のみ で、 動詞はない

■  scam  →  名詞 に加えて、 動詞もある


名詞  ” sb. “( substantive )も、動詞 ” v. “( verb )も、
まず  ” slang ” ( スラング )と明示されている。

◇  ” sb. ”  =  substantive

「 実質的な 」「 かなりの 」に加え、文法用語としては、
名詞の 」「 名詞的な 」を意味する形容詞。


これまで何度も強調してきた通り、 由緒正しい ” fraud ”
よりは、格下の位置づけであることを裏打ちする印象。

◆  “ The Oxford English Dictionary ” ( オックスフォード英語辞典 ) は、
OED “ ( オーイーディー ) の略称で知られる。

[ 公式サイト ]  →   http://www.oed.com/

1884年にイギリスで刊行が始まり、 最新版の第2版は1989年刊。

全20巻、 2万1730頁、 29万1500の見出し語、 62kg。

世界最大の英語辞典である。

語義の配列は、 頻出順ではなく、 発生順の 「 歴史主義 」。

成り立ちを、 系統的にたどれる利点がある。

▼ 「 縮刷版 」 及び 「 CD-ROM版 」 も発売されている  ▼

[ 両方入手済み ]  →   辞書の「自炊」と辞書アプリ

“ OED ” 編集主幹の  James Murray  博士  ( 1837-1915 )
については、 ” in place ”  で触れている ( 写真入り )。

 

 

【参考】    ※  外部サイト ( 英文 )

【発音】  kríptoukʌ̀rənsi
【音節】  cryp-to-cur-ren-cy  (5音節)

 


  ウクライナ紛争に便乗した、暗号通貨詐欺が増加中

( 2022年3月 )

 


▲  ブラウザ通知が 詐欺を働くことも

( 2022年10月 )


▲  エネルギー価格の高騰も 詐欺の手口

( 2022年11月 )

 


▲ 
の注文 による詐欺も 世界的に増えている

( 2022年12月 )

 


▲  クリスマス前、 お客に注意喚起

( 2022年12月 )

※  下線は引用者

 


▲ 
ソーシャルメディアでは 金銭詐欺 が目立つ

( 2023年6月 )

 


▲ 
大手サイトも狙われている

( 2023年10月 )

 


▲  宅配便の
詐欺も

( 2023年12月 )

 


▲  本物かと見紛うニュース

( 2024年1月 )

 


▲  詐欺師が運営するサポセン

( 2024年7月 )

 


▲  ウイルス感染の スキャン

( 2024年8月 )

 


▲  ハッカー集団が手掛けたディープフェイク映像

( 2024年10月 )

 


▲ 
画像認証などのキャプチャ詐欺

( 2024年11月 )


▲  米国政府から 送付されてきた 税申告書類

だまされるな ! 」   「 電話を切れ !

( 2023年1月 )


  拡大図

※  下線は引用者

 

  •  Do not be fooled !
  •  Don’t be fooled !
    ( だまされるな
      他動詞  ” fool ”
  •  Do not be a fool !
  •  Don’t be a fool !
    ( ばかになるな !
    ( ばかな真似はよせ !
      可算名詞  ” fool ”
  •  I made a fool of myself.
    ( 恥をさらしたわ。 )
      可算名詞  ” fool ”

【発音】  fúːl  (1音節)

【活用形】  fools – fooled – fooled – fooling


” fool ”  の語源は、 ” fraud ” と同じく、 ラテン語。

ラテン語の 「 ふいご 」( follis ) が、 ” fool ”  の語源。

「 ふいご 」 とは 「 送風機 」 みたいなもの。

「 ふいご 」  →  「 ふくらませた頬 」 →  「 ばかづら 」

または、

「 空気袋 」  →  「 中身がない 」 →  「 頭からっぽ 」

 

 

【参考】    ※  YouTube

インドにある詐欺サポセンの在処を追い詰めていく英語ドキュメンタリー。

 

 

 

 

 

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