Slam
2023/06/27
激しく非難する
ニュース見出しでよく目にする動詞のひとつ。
エンタメ系など、さほど堅くない記事中心に起用される。
【発音】 slǽm (1音節)
–
–
◆ 「 非難する 」を意味する動詞は少なくない。
私見を述べると、
◇ 動詞 「 非難する 」 実用トップ 8 ( 私見 )
- criticize ( 自動詞・他動詞 )
- blame ( 他動詞・名詞 ) ※ 弱い非難
- attack ( 自動詞・他動詞 ) ← 「 非難 」は他動詞のみ
- accuse ( 自動詞・他動詞 )
- condemn ( 他動詞のみ )
- denounce ( 他動詞のみ )
- chastise ( 他動詞のみ )
- censure ( 他動詞のみ )
–
◆ 上記7つに比べると、”slam” の重要度は低め。
その割には、よく見かける。
「 非難 」の意味としては、次のすべての英和辞典で、
【 話し言葉 】 または「 口語 」と明示されている。
自ら使えなくても、一目で意味が分かれば
間に合うレベルの単語である。
その程度にもかかわらず、本稿でご案内する理由は、
< 見出し > にやたらと多用される からである。
◆ 見出しは記事内容の 要約 であり、中身を読むべきか
どうかの 判断基準 を示す。
したがって、見出しのキーワードを読み取れない
ことの潜在的な機会損失は少なくない と考える。
そのため、見出しに出がちの表現を 優先させる 方針を、
弊サイトでは採用している。
メディア側も、販促などマーケティングのため、
一目瞭然の平明な表現に努める。
見出し作りに叡智を集めているのだから、
英語学習には非常に役立つ。
【参照】 「Gmail」で作る単語帳
◆ ” slam ” の語源は、擬声語( ぎせいご )。
【発音】 slǽm (1音節)
「 擬声語 」とは、実際の音を真似た言葉。
擬音語 ( オノマトペ、 onomatopoeia ) とも言う。
【参照】 “ tingling sensation (ASMR) ”、 “ ring a bell ”
–
日本語の擬声語で似通うのは、
- バタン
- ドカン
- ドシン
“ bump ” にもやや重なる。
◆ イメージは、 バスケの 「 スラム ダンク 」 ( slam dunk )。
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–
「 ドカン 」 とリングに 叩きつけ ( slam )、
沈める( dunk )のが、ダンク ショット
–
–
「 ドアを バタン と閉めないでください 」
–
または 「 ドアを バタン と閉める 」 ( slam the door )。
- ” The door slammed shut.”
( ドアがバタンと閉まった。)
- ” I slammed the door in his face.”
( 彼の目の前でドアをバタンと閉めた。)
( 彼を門前払いしてやったわ。)
–
–
One door gets slammed in my faceand I search for another.
( 門前払いを食らったら、 次の道を探します。)
–
Brooke Shields ( 1965- )
–
→ ” no need ” 参照
–
◆ “slam” には、 他動詞・自動詞・名詞がある。
基本的意味は、
– 他動詞 「 バタンと閉める 」 「 ドシンと置く 」 「 強打する 」
– 自動詞 「 バタンと閉まる 」 「 ドシンとぶつかる 」
– 名詞 「 バタン( との音)」 「 強打 」
【活用形】 slams – slammed – slammed – slamming
–
- “I slammed down the books on the desk.”
( 机に本をドシンと置いた。)
– - “He slammed the brake.”
“He slammed on the brake.”
( 彼はブレーキを思いきり踏んだ。)
– - “A drunk driver slammed into my car.”
( 飲酒運転の車が私の車に突っ込んだ。)
– - “A truck slammed into pedestrians at a parade.”
(パレードで、トラックが歩行者に突っ込んだ。)
– - “Naomi slammed her racket to the court twice in the second set.”
( ナオミは、第2セットでラケットをコートに2度叩きつけた。)
– - “Person Rescued After Car Slams Into House”
( 車が家に突っ込み、 1名救助 ) ※ 見出し
– - “Hurricane X slams Louisiana, kills six”
( ハリケーンX、ルイジアナを襲撃、死者6名 )
※ 見出し
– - “Coronavirus Slams Houston Hospitals”
( コロナウイルス、ヒューストンの病院を襲う )
※ 見出し
◆ 「 グランドスラム ( Grand Slam )」 とは、
スポーツなどにおける主要大会の優勝を独占すること。
野球なら 「 満塁ホームラン 」 の俗称。
「 総なめ 」 することだが、トランプのブリッジでは、早くも
1892年の初出 が確認されている。–
「 大勝 」を意味する名詞 ” slam ” の語源には、諸説ある。
「 バタン 」 「 ドカン 」 「 ドシン 」といった、
猛烈な語感の流れを引く点については、異論はない模様。
◆ 地味な落ち着きと静けさに欠けるものの、” slam ”
の基本的な意味合いは、あくまでも中立的である。
なお、「 スラム街 」は、” slum “で別単語。
スペルも発音も異なる。
【発音】 slʌ́m (1音節)
いずれも 「 1音節( one syllable )」 なのが共通点。
ゲロする勢いで、「 スラム 」と一気に吐き出す。
-
スラム
「音節」( syllable、シラブル )とは、発音の最小単位。
日本語の場合、 原則として「 仮名一字が1音節 」。
そのため、 音節を意識する機会は乏しい。
音節の日英比較は、 ” integrity ” で事細かにご説明した。
◆ こちらの基本から派生したのが、「 激しく非難する 」
さらには 「 酷評する 」の意。
-
バタン
-
ドカン
-
ドシン
こうして乱暴に叩きつける様子から、
他者を責めとがめる「 非難 」の意味が生じた。
-
ピシャリ
-
ピシャッ
中立的な基本的用法から、一線を画した使い方で、
用法としては【 話し言葉 】または【 俗語 】
とされている。
■ インパクトがあるため、集客が見込める表現
■ その反面、堅めのメディアからは敬遠の印象
以下にも、同じ傾向が見られる。
- open up about –
( ~ について打ち明ける )
– - break the silence
( 沈黙を破る )
– - snub
( 鼻であしらう、 無視する )
– - gush about –
( 〜 についてしゃべりまくる )
– - smitten with
( ~ に夢中 )
– - dish on –
( 軽率に情報をばらまく )
◆ 今年2017年のニュース見出しを見ていこう。
- “X Slams Y for Comments About Late Father”
(亡父へのYのコメントをXが非難)
-| - “P Slams Q’s Racial Slurs”
(Qの人種差別的中傷をPが非難)
– - “M Slams N for Cheating”
(MはNの浮気を非難)
– - “X Slammed for Defending Y”
(YをかばったXに非難)
– - “Y Slams Media Speculation about Plastic Surgery”
(整形疑惑のYがマスコミの憶測を非難)
– - “President Slams Congress”
(大統領が議会を非難)
– - “K Slammed for Offensive Comments”
(侮辱的発言でKに非難)
– - “X Slams Women Who Voted for Y”
(Yに投票した女性たちをXが非難)
– - “School Slammed Over Anthem Walkout”
(国歌ボイコットで学校に非難)
出るわ、 出るわ。
3分間の 「 タイトル検索 」 で、 これだけ採集できた。
有名人の発言や言い合いには、 話題性があり、
なにかと注目されやすい。
既に触れた通り、見栄えがするので、重宝される。
◆ 2018年以降のニュース報道からも、追加でご紹介。
- “President Slams Reporter as Fake News”
(大統領が記者をフェイクニュースで非難)
– - “Scientist slams ‘chaotic’ conditions on quarantined cruise ship”
(科学者が検疫クルーズ船の「無秩序」状態を非難)
– - “Scientist slams X on TV”
(科学者、テレビでXを非難)
– - “X and Y Slam Grammys for Being ‘Corrupt’”
(グラミー賞は「腐っている」と非難するXとY)
– - “President slams whistleblower, suggests treason”
(大統領、内部告発者を非難し、反逆を示唆)
– - “The victim’s family slammed the police for
describing it as an accident.”
(事故と表現した警察を遺族は非難した。)
– - “The 1980 movie was slammed by critics,
but was a box office hit.”
(その1980年公開の映画は、批評家からは酷評されたが、
興行的には大ヒットした。)
– - ” X and Y Slammed for Climate Hypocrisy”
(XとY、 気候の偽善で非難される)
– - “X slams Y over decision to send tanks to Ukraine”
(ウクライナへの戦車派遣決定でX国がY国を非難)
–
< タイトル検索 >
- 単一キーワード intitle:
- 複数キーワード allintitle:
–
◇ 現在形 ” slams ” で「 タイトル検索 」した理由
「 見出し 」の場合、
1) 現在形は、過去の出来事にも用いられる
2) 現在形は、現在・過去の両方を表す
とはいえ、「 あいまい検索 」 風に出てくることも
多いので、そう神経質にならなくてもよい感触。
–
◇ 「 見出し 」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方( 見出し編 )RNN時事英語
【類似表現】
” lambaste ”
https://mickeyweb.info/archives/14647
( 酷評する、 非難する )
” point the finge r”
https://mickeyweb.info/archives/22974
( 公然と非難する、 責める、 名指しする )
” lash out ”
https://mickeyweb.info/archives/25403
( 食ってかかる、 激しく非難する )
◆ なお、自動運転の要となる「 SLAM 技術 」は、
- Simultaneous Localization and Mapping
の頭字語( acronym )。
「 自己位置推定 と 環境地図作製 」くらいの意。
デバイス自身の居場所( 現在地 )を推定するSLAM技術は、
自律飛行する 「 ドローン 」 にも搭載されている。
読み方は一緒だが、本稿の ” slam ” とは、 もとより無関係。