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Custody

      2022/06/12

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 3 minutes

(1)拘禁   (2)保護、養育権   (3)保管・管理

一般人の日常生活には無縁に近いが、
ニュースには通年欠かせない単語。

【発音】  kʌ́stədi
【音節】  cus-to-dy  (3音節)

年がら年中、メディア報道に出てくる。

嫌でも見聞きする。

だが、 離婚か犯罪にでも巻き込まれない限り、
自ら使う機会はめったに訪れない。

とすれば、使用上受け身中心になるため、
誤解している部分もあるかもしれない。

復習を兼ねて、ここで再確認してみよう。

◆  ” custody ” の品詞は名詞のみ。

不可算名詞である。

語源は、 ラテン語「 見張ること 」( custōdia )。

これから見ていくように 「 見張る 」 意味合いを
貫くのが ” custody “。


ぴりぴりした緊張感 が漂う語である。

 

◆  主な用途は3つ。

(1)被疑者などの 拘禁
(2)未成年などの 保護、養育権
(3)金品などの 保管・管理

その道の専門家や訴訟当事者でなければ、
これらを押さえておけば、通常は間に合う。

ニュース用途も、ざっくりこの3つに区分できる。

いずれも、語源「見張る」が見え隠れする。

◆  報道で年中出てくるのは(1)。

次いで(2)。

最後に(3)。
こんな印象を私は受ける。

信用できる統計が見つかず、ご紹介できない
のが残念だが、常識的な報道価値から考えて、

(1)→(2)→(3)の頻出順と推測できる。
(2)→(1)→(3)もありうる。

◆  英英辞書の語釈も、概ね2つか3つに分かれる。

堅い内容なので、派手に派生しなかったらしい。
そのため、意味がきっちり固定されており、
辞書間の個性は乏しい。

今回調べた7点の英英辞書で、私にとって最も分かり
やすかったのが、LDOCE6。

custody

1. the right to take care of a child, 
given to one of their parents when 
they have divorced.

2. when someone is kept in prison until
they go to court, because the police think
they have committed a crime.

3. formal
when someone is responsible for keeping 
and looking after something.

(LDOCE6、ロングマン)

<ポイント>

1. 離婚時の子の 保護、養育権
2. 被疑者などの 拘禁
3. 金品などの 保管・管理

【発音】  kʌ́stədi
【音節】  cus-to-dy  (3音節)

冗長のきらいはあるものの、LDOCEの説明は
いつもながら丁寧で容易。

3大学習英英辞典(EFL辞典)の残りの2点は、
「保護、養育権」と「保管・管理」をまとめて説明。

custody

1. the legal right or duty to take care of
or keep somebody/something;
the act of taking care of something/somebody.

2. the state of being in prison, especially
while waiting for trial.

(OALD9、オックスフォード)

custody

1. the legal right or duty to care for someone
or something, especially a child after its parents
have separated or died.

2.  the state of being kept in prison, especially
while waiting to go to court for trial.

(CALD4、ケンブリッジ)

【発音】  kʌ́stədi
【音節】  cus-to-dy  (3音節)

LDOCE6よりすっきりしており、これらを好む学習者
も多いだろう。

3大EFL辞典の記載から分かることは、”custody” の
意味は前掲赤枠にて網羅されている点。

基礎的かつ重要な法律用語でもあるため、専門家
向けにはさらなる説明が加わるのは言うまでもない。

◆  そこで、法律辞典の説明をご覧に入れたい。

 

Amazon Japan / Amazon US

弊サイトでお馴染みの『ブラックス法律辞典』。

1891年に発刊され、130年以上の歴史を誇る。

判例などに、最も引用される辞典である。

英米法を学ぶ学生で、知らない者は皆無レベルの存在感

現時点( 2018年7月 初稿時 )での最新版(第10版、
2014年刊)の ” custody ” の解説を全部転載する。

Black’s Law Dictionary, 10th Edition”   p. 467.

(Thomson Reuters 2014).

exonerate “( 容疑を晴らす、免除する )のように、
数行の解説もあれば、単語うじゃうじゃな ” custody ”
のような例もある。

先ほどの学習英英辞典とは比較にならない  …

一見こう思われる。

しかし、目をさらすと、これまた3つで完結している
ことに気づく。

すなわち緑の部分。

番号は異なれど、先の赤枠の内容に対応している。

  1.  金品などの 保管・管理
  2.  未成年などの 保護、養育権
  3.  被疑者などの 拘禁

「▶」の副項目が多いため、煩雑に見えがち。

法律辞典なので、各々詳述されているものの、
3本柱は一般辞書と重なる。

以上より分かることは、繰り返しになるが、
“custody” は赤枠内でカバーされている点。

専門家以外は、この3つをざっと把握すればよい。

◆  ” custody ” の場合、多用されるフレーズが
確立してることに特色がある。

collocation(s) ” と称し、「連語(れんご)」
と訳されるもの。

【発音】  kɑ̀ləkéiʃən
【音節】  col-lo-ca-tion  (4音節)

<語と語のつながり>を指すが、「連語」と言っても
通じにくいため、カタカナ「コロケーション」が
まかり通っている。

◇  英日のコロケーション辞典は、こちらでご案内
→   辞書の「自炊」と辞書アプリ


◆  先述の3大学習英英辞典は、コロケーションも併記する。

この充実ぶりが、学習辞典の強みである。

特に、LDOCE ” と “ OALD ” は、コロケーション満載。

” custody ” の ” collocations ” は、オンライン版
でも確認できる。

< コロケーションについて >

・ “aware
・ LDOCE(ロングマン現代英英辞典)
・ 辞書の「自炊」と辞書アプリ
・ 英語辞書は「紙」か「電子版」か

【実例】    ※  辞書アプリの転載あり
threshold“、”damage“、 “scrutiny“、
backdrop“、”paperwork“、”struggle”、
downfall“、”bombshell”、“feasible

 

◆  時事ニュースによく出るコロケーションは、以下の通り。

  • joint custody
    (共同親権)
  • child custody
    (親権)

  • a custody battle
    (親権争い)

  • get / win custody
    (親権を得る、養育権を得る)

  • seek custody
    (親権を得ようとする)

  • lose custody
    (親権を失う)

  • be held / kept in custody
    (拘禁される)

  • take somebody into custody
    (拘禁する、保護する)

  • place somebody in custody
    (留置する)

  • remain in custody
    (拘禁中である)

  • be released from custody
    (釈放される)

  • Suspect In Custody
    (容疑者の身柄確保)  ※  ニュース見出し

こうきん【拘禁】
2. [法] 留置施設・拘置所・刑務所などに
被疑者・被告人・受刑者などを継続的に
拘束すること。

りゅうち【留置】
[法] 人や者を一定の支配下におくこと。

こうりゅう【拘留】
自由刑の一種。1日以上30日未満の間、
刑事施設に拘置する刑罰。

こうりゅう【勾留】
被疑者・被告人を拘禁する刑事手続上の強制処分。
未決勾留。

ひぎしゃ【被疑者】
犯罪の嫌疑を受けた者でまだ起訴されない者。
容疑者。

(広辞苑 第七版)

冒頭に「年がら年中、メディア報道に出てくる」
と記したが、概ね上記が該当する。

最近(2018年6~7月)の日本関連のニュースであれば、
ハーグ条約(the Hague Convention)に基づき、
国内法を見直す政府の動向に伴い、”child custody” が
旬の言葉になっている。

普段の移動時間などは、英語ニュースに親しむとよいと思う。

“custody” は、ばんばん出てくるから、自ずと身につく。

英語学習は情報収集を兼ねると一石二鳥で、楽しい。
中級学習者の実力なら、十分可能である。

 

【類似表現】

“keep an eye on – ”
https://mickeyweb.info/archives/784
(~に目を光らせる、~を監視する)

“keep tabs on – ”
https://mickeyweb.info/archives/12749
(〜を見張る、~を監視する)

“oversee”
https://mickeyweb.info/archives/22952
(監督する)

 

 

 

 

 

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